東京・駒場公園に佇む重要文化財「旧前田家本邸」。
前田家第16代当主・利為侯爵が昭和初期に建てたこの邸宅は、洋館と和館から成り立っています。
今回は午後に参加した和館の無料ガイドツアーについてご紹介します。
日本文化を海外の賓客に伝えるために造られた和館には、建築、庭園、杉戸絵、そして茶室まで、静かに心を打つ見どころが詰まっていました。
重要文化財・旧前田家本邸に伺いました。前田家第16代当主・利為侯爵が建てた邸宅で、洋館と、渡り廊下で結ばれた2階建て純日本風の和館の二つから成ります。
今回は午後に参加した和館の無料ガイドツアーについて記します。ガイドツアーに参加した場合のみ、通常 非公開の小座敷、2階や茶室なども案内していただけます(茶室は使用されていない場合のみ)。
旧前田家本邸 和館について
和館は昭和4年から5年にかけて建設された木造2階建ての近代和風建築です。庭園側から見る姿は、京都の銀閣寺に似ているとも言われています。
当初、和館は計画になかったそうですが、外国からの賓客に日本文化を伝えるための空間として建築が決定されたとのことでした。
1階|続き間と上質な意匠
1階は主室「御客間」と次の間「御次之間」を合わせて約40畳近い続き間となっており、その周囲を畳廊下と入側がぐるりと囲んでいます。
竣工当時は金砂子の壁紙が用いられていたそうで、現在は後述する2階の一部にのみ、その名残を見ることができます。
鳥居棚と欄間の美しさ
棚は筆返しの付いた三段の違い棚で、形状から「鳥居棚」と呼ばれています。筆返しや角の面取りが丁寧に施されており、これが「几帳面」という言葉の語源だという説明が印象的でした。
透かし彫りの欄間は、木材とは思えないほど繊細で、まるでレースのような美しさです。
玄関から庭まで視線を遮るものがなく、戸を開け放たれているので自然の風が建物の中を通り抜けます。派手さはなくとも、上質な調度に包まれた落ち着いた空間でした。
2階|御居間と金砂子の壁紙
2階は北側に吹き抜け階段、南側に15畳の御居間があり、その間を廊下と7畳間でつないでいます。
かつては円窓から、中国式庭園や煎茶室を望むことができたそうです。
棚のある部分の壁紙には、金箔や銀箔を細かく砕いて散らした「金砂子」が用いられています。GHQ接収時に多くが剥がされ、現在旧前田家本邸で残るのはこの一部分のみとのことでした。
和と洋が共存する設備
階段は和風の意匠ですが、踊り場となる中2階には洋風のトイレと浴室が設けられています。浴槽やボイラーも備えられており、当時の最先端設備だったことがうかがえます。
6人家族の暮らしを支えるため、最盛期には136人もの使用人が仕えていたという話を洋館のガイドツアー参加時に聞きましたが、この邸宅の規模と格式をあらためて実感しました。
池泉庭園と来客をもてなす工夫
池泉庭園は流れを中心とした設えで、灯籠や景石の一部は本郷邸から移設されたものです。
現在は水が張られ鯉が泳いでいますが、もともとは来客時のみ水が流れる仕組みだったそうです。
橋本雅邦による杉戸絵
邸内には橋本雅邦による杉戸絵が数多く残されています。大廊下から中廊下にかけては松竹梅のうち竹と梅が描かれています。
大廊下と茶室をつなぐ杉戸には松が描かれ、引手には前田家の家紋「加賀梅鉢」があしらわれていました。
松の杉戸絵の裏側には秋の花鳥図として萩や紅葉が描かれ、中廊下の杉戸絵には水紋とともに燕子花とかきつばた、ツバメの姿を見ることができます。
茶室|静寂の中にある美
この日は幸運にも茶室を見学することができました。4畳半本勝手の茶室で、入口は舟底天井、杉戸には牡丹が描かれています。
躙り口のほか、立ったまま出入りできる貴人口も設けられていました。網代天井と駆け込み天井の間に垂れ壁があるのが、この茶室の特徴だそうです。
和館ガイドツアーを終えて
和館のガイドツアーは、偶然にも洋館の際と同じ案内の方でした。予定時間を大幅に超え、1時間近く丁寧に案内してくださり、建築や意匠、当時のおもてなしについて幅広く学ぶことができました。
説明を聞きながら巡ることで想像がふくらみ、懐かしい日本家屋から子どもの頃の記憶を思い出す場面もありました。
洋館、和館、そして茶室という貴重な文化財が、これからも次の世代へと受け継がれていくこと、そしてこの素晴らしいガイドツアーもまた続いていくことを願っています。




































訪問日:2026年1月14日(水)
旧前田家本邸・洋館の記事はこちら ↓



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