東京・駒場公園に佇む重要文化財旧前田家本邸。
チューダー様式の洋館と書院造の和館から成るこの邸宅で、午前中は洋館のガイドツアーに参加しました。
午後には和館のガイドツアーへ。
通常は立ち入ることのできない2階や茶室まで案内していただけるこのツアーでは、洋館の華やかさとは対照的に、静けさの中に息づく日本文化の美に触れることができました。
杉戸絵や池泉庭園、そして茶室――。
ガイドの説明を聞きながら巡ることで見えてきた、和館の魅力をご紹介します。
和館ガイドツアーで見られる範囲とポイント
重要文化財・旧前田家本邸の和館を、午後の無料ガイドツアーで見学しました。
和館は通常の見学では立ち入れないエリアも多く、ガイドツアーに参加することで見学できる範囲が大きく広がります。
小座敷や2階部分、茶室などはツアー参加者のみが案内されるため、より深く建物の魅力に触れることができます。
特に茶室は、使用状況によって見学できない場合もあるため、この日は幸運な機会でした。
自由見学ではわからない意匠や背景についても詳しく解説していただけるため、建物の見え方が大きく変わる体験でした。
午前中に見学した洋館が迎賓のための華やかな空間だったのに対し、和館は外国の賓客に日本文化を伝えるために造られた、落ち着きと静けさを感じる空間。
同じ敷地にありながら、その性格の違いが強く印象に残りました。
旧前田家本邸 和館について
和館は昭和4年から5年にかけて建設された木造2階建ての近代和風建築です。庭園側から見る姿は、京都の銀閣寺に似ているとも言われています。
当初、和館は計画になかったそうですが、外国からの賓客に日本文化を伝えるための空間として建築が決定されたとのことでした。
その背景を知ったうえで建物を見ると、ひとつひとつの意匠にも意味が込められているように感じられました。
1階|続き間と上質な意匠
1階は主室「御客間」と次の間「御次之間」を合わせて約40畳近い続き間となっており、その周囲を畳廊下と入側がぐるりと囲んでいます。
竣工当時は金砂子の壁紙が用いられていたそうで、現在は後述する2階の一部にのみ、その名残を見ることができます。
鳥居棚と欄間の美しさ
棚は筆返しの付いた三段の違い棚で、形状から「鳥居棚」と呼ばれています。筆返しや角の面取りが丁寧に施されており、これが「几帳面」という言葉の語源だという説明が印象的でした。
透かし彫りの欄間は、木材とは思えないほど繊細で、まるでレースのような美しさです。
実際に近くで見ると細部の彫りの細やかさに思わず足を止めて見入ってしまいました。
玄関から庭まで視線を遮るものがなく、戸を開け放たれているので自然の風が建物の中を通り抜けます。派手さはなくとも、上質な調度に包まれた落ち着いた空間でした。
その場に立っていると、音や気配までやわらかく感じられ、洋館とは異なる静かな時間が流れているように思えました。
2階|御居間と金砂子の壁紙
2階は北側に吹き抜け階段、南側に15畳の御居間があり、その間を廊下と7畳間でつないでいます。
かつては円窓から、中国式庭園や煎茶室を望むことができたそうです。
棚のある部分の壁紙には、金箔や銀箔を細かく砕いて散らした「金砂子」が用いられています。GHQ接収時に多くが剥がされ、現在旧前田家本邸で残るのはこの一部分のみとのことでした。
失われた部分が多いと聞くと、こうして残されている箇所のひとつひとつがより貴重に感じられました。
和と洋が共存する設備
階段は和風の意匠ですが、踊り場となる中2階には洋風のトイレと浴室が設けられています。浴槽やボイラーも備えられており、当時の最先端設備だったことがうかがえます。
6人家族の暮らしを支えるため、最盛期には136人もの使用人が仕えていたという話を
洋館のガイドツアーで聞きました。
実際に空間を歩きながらその話を思い出すと、この邸宅の規模と格式がより現実味をもって伝わってきます。
池泉庭園と来客をもてなす工夫
池泉庭園は流れを中心とした設えで、灯籠や景石の一部は本郷邸から移設されたものです。
現在は水が張られ鯉が泳いでいますが、もともとは来客時のみ水が流れる仕組みだったそうです。
こうした見えない部分にまで工夫が施されていることに、当時のおもてなしの心が感じられました。
橋本雅邦による杉戸絵
邸内には橋本雅邦による杉戸絵が数多く残されています。大廊下から中廊下にかけては松竹梅のうち竹と梅が描かれています。
大廊下と茶室をつなぐ杉戸には松が描かれ、引手には前田家の家紋「加賀梅鉢」があしらわれていました。
松の杉戸絵の裏側には秋の花鳥図として萩や紅葉が描かれ、中廊下の杉戸絵には水紋とともに燕子花(かきつばた)やツバメの姿を見ることができます。
ガイドの説明を聞きながら眺めることで、それぞれの図柄に込められた意味や季節の移ろいが、より鮮やかに感じられました。
茶室|静寂の中にある美
この日は幸運にも茶室を見学することができました。4畳半本勝手の茶室で、入口は舟底天井、杉戸には牡丹が描かれています。
躙り口のほか、立ったまま出入りできる貴人口も設けられていました。網代天井と駆け込み天井の間に垂れ壁があるのが、この茶室の特徴だそうです。
実際にその空間に身を置くと、外の音がやわらかく遠のき、自然と気持ちが静まっていくような感覚がありました。
華やかさはなくとも、静けさそのものが美しさとして感じられる場所でした。
和館ガイドツアーを終えて
和館のガイドツアーは、偶然にも洋館の際と同じ案内の方でした。予定時間を大幅に超え、1時間近く丁寧に案内してくださり、建築や意匠、当時のおもてなしについて幅広く学ぶことができました。
説明を聞きながら巡ることで想像がふくらみ、懐かしい日本家屋から子どもの頃の記憶を思い出す場面もありました。
和館は、華やかな洋館とは異なり、静けさの中で日本文化の美を感じられる空間でした。
ガイドツアーに参加することで、その魅力をより深く味わえると感じます。
洋館、和館、そして茶室という貴重な文化財が、これからも次の世代へと受け継がれていくこと、そしてこの素晴らしいガイドツアーもまた続いていくことを願っています。




































訪問日:2026年1月14日(水)
🏛 旧前田家本邸をめぐる記録
旧前田家本邸には、書院造の和館のほかに、チューダー様式の壮麗な洋館も残されています。
午前中に参加した洋館のガイドツアー記録もあわせてご覧ください。
🏰 東京で見学できる歴史的建築
東京には、旧前田家本邸のように、歴史ある建物を実際に見学できる場所があります。
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