東京都目黒区の駒場公園にある旧前田家本邸。
洋館の隣には、外国からの賓客を迎えるために建てられた和館が残されています。
今回は無料のガイドツアーに参加し、御客間・御次之間をはじめ、通常の見学では入ることのできない2階の御居間や小座敷まで見学しました。
さらに、この日は茶室が使用されていなかったため、4畳半の茶室内部にも入ることができました。
金砂子の壁や橋本雅邦の杉戸絵、2階から眺める池泉庭園、中2階に残る浴室など、ガイドさんの説明を聞きながら巡った旧前田家本邸・和館の見どころを紹介します。
旧前田家本邸の和館をガイドツアーで見学
2026年1月。目黒区の駒場公園にある旧前田家本邸の和館を、無料のガイドツアーで見学しました。
和館は1930(昭和5)年に竣工した木造2階建ての近代和風建築です。
旧前田家本邸では洋館が日常生活の中心だったのに対し、和館は外国からの賓客に日本文化を伝えるための迎賓施設として建てられました。
洋館と和館は渡り廊下でつながっており、洋風から和風へと切り替わるように意匠にも工夫がされています。
和館は通常でも見学できますが、ガイドツアーに参加すると、通常の見学では入れない2階や小座敷にも案内していただけます。
また、茶室が使用されていなかったので、茶室内部も見学することができました。
和館では玄関で靴を脱いで見学します。 今回はガイドさんの説明を聞きながら、御客間・御次之間から2階、小座敷、茶室へと館内を巡りました。
御客間・御次之間|襖を開けると40畳ほどの大広間に
玄関から大廊下を進むと、和館の中心となる御客間と御次之間があります。 2つの部屋は襖を開けると続き間となり、合わせて40畳ほどの大広間になります。
御客間には床の間や違い棚が設けられ、そのひとつが鳥居のような形をした「鳥居棚」です。 棚の端には、筆や巻物などが落ちないように反り上がった「筆返し」も見られます。
御客間と御次之間の間には、細かな透かし彫りを施した欄間があります。 大きな続き間の中でも、欄間や棚など細部まで手の込んだ意匠を見ることができました。
部屋の南側には畳敷きの入側が延び、その外側には縁側があります。 入側と縁側の先には和館の庭園が広がり、室内から庭へと視線が抜ける造りになっています。
ガイドツアーで2階へ|御居間と金砂子の壁
1階の御客間・御次之間を見学したあとは、階段を上がって2階へ案内していただきました。
2階の御居間は15畳の和室で、床の間と違い棚を備えています。 1階の大広間とはまた雰囲気が異なり、格天井や南側いっぱいに設けられたガラス窓など、軽やかな印象の空間です。
違い棚の奥には、細かな金箔を散らした金砂子(きんすなご)の壁紙が残っています。 現在、和館に残る当初の壁紙はこの部分だけで、かつては御客間や御次之間、小座敷などにも金砂子の壁が使われていました。
東側の壁には丸い円窓があります。 かつてこの先には煎茶室があり、現在とは異なる庭の景色が広がっていたそうです。
2階から眺める和館庭園|池よりも「流れ」を楽しむ庭
御居間の南側に広がるのが、和館の池泉庭園です。 通常の見学では庭園内に入ることができないため、2階の窓から庭を眺めながら説明を聞きました。
この庭は、池そのものよりも「流れ」を楽しむように造られています。 滝を正面ではなく左奥に設け、そこから水が庭を流れて池へと続く構成になっています。
前田侯爵は、外国から客人を迎えたときなどに池へ水を流していたそうです。 庭に置かれた灯籠や景石の一部は、以前の本邸があった本郷から移されたものと伝わっています。
2階から眺めると、左奥の滝から池へと続く水の流れや、庭全体の造りがよく分かりました。
中2階には浴室とトイレ|和館に備えられた近代的な設備
2階の見学を終えて階段を下りる途中には、中2階のようになった踊り場があり、浴室とトイレが設けられています。
純和風の建物の中ですが、浴室には洋風のバスタブが置かれ、床はタイル張り。 さらにドイツ製のボイラーが備えられ、洗面台と洋式便器には東洋陶器製のものが使われていました。
畳敷きの御客間や御居間を見てきたあとだけに、こうした近代的な設備が和館の中に組み込まれているのが印象的でした。
小座敷|中廊下の奥にある格式ある10畳間
中2階から1階へ戻り、中廊下の奥にある小座敷へ案内していただきました。 小座敷は10畳の和室です。
この部屋がもともと何に使われていたのか、詳しい用途は分かっていません。 一方で、室内には床の間と違い棚が設けられ、襖には日本画家・橋本雅邦による四季山水図が使われていました。 こうした造りから、格式のある部屋だったことが分かるそうです。
現在は失われていますが、小座敷の壁にもかつては金砂子が使われていました。 2階の御居間に残る金砂子とあわせて見ると、建築当初の和館が現在とはまた違った華やかさを持っていたことが想像できます。
橋本雅邦の杉戸絵|大廊下を彩る四季の絵
小座敷を見学したあと、大廊下を通って茶室へ向かいます。 ここで目を引くのが、日本画家・橋本雅邦が描いた杉戸絵です。
大廊下の杉戸には、燕子花と燕、水紋を描いたものや、萩や紅葉など四季を感じさせる絵が残されています。 これらの杉戸は、以前の本郷邸で使われていたものと伝わっています。
杉戸には装飾としての美しさだけでなく、御客間などの接客空間と、そのほかの空間を分ける役割もありました。 引手を見ると、前田家の家紋である加賀梅鉢もあしらわれています。
橋本雅邦の杉戸絵は1階だけではありません。 2階の階段廊下と御書斎の境にも、水墨で松を描いた杉戸がありました。 館内を巡っていると、場所によって異なる雅邦の作品を見ることができます。
茶室|使用されていなかったため内部も見学
大廊下で杉戸絵の説明を聞いたあと、その先にある茶室へ向かいました。 この日は茶室が使用されていなかったため、内部まで見学することができました。
茶室へ入る前には、手前のスペースに荷物を置きます。 狭い茶室内で建物を傷つけないためとのことで、身軽になってから中へ入りました。
茶室は4畳半で、京都・裏千家の代表的な茶室「又隠(ゆういん)」をもとに造られています。 設計を手がけたのは、数寄屋大工の木村清兵衛です。
特徴のひとつが、立ったまま出入りできる貴人口です。 もとになった又隠では窓が設けられている位置ですが、旧前田家本邸の茶室では貴人口に変更されています。
天井にも変化があり、網代天井と駆け込み天井を組み合わせた造りになっています。 小さな空間ですが、入口や天井など、場所ごとに異なる意匠を見ることができました。
茶室の外には、和館南側の池泉庭園とは別に露地(茶庭)が設けられています。 庭には小さな石が置かれていましたが、これは先へ立ち入らないことを示すものだとガイドさんから教えていただきました。
和館と渡り廊下でつながる洋館
旧前田家本邸の和館は、渡り廊下を通して洋館とつながっています。 外国からの賓客を迎えるために造られた和館と、前田家の日常生活の場だった洋館が隣り合い、ひとつの邸宅の中でまったく異なる建築を見ることができます。
この日は午後の和館ガイドツアーに参加する前に、午前中は洋館のガイドツアーにも参加しました。 洋館では大客室や侯爵夫妻の居室などを巡り、和館とは異なる建築や室内意匠を見ることができました。



















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