碌山美術館を訪れたあと、ずっと気になっていた場所がありました。
それが、安曇野市天蚕センター。
岡谷蚕糸博物館で見た、染めたわけでもないのに淡い黄緑色に輝く生糸――天蚕糸。
虫は正直苦手だけれど、この不思議な色と光沢が忘れられず、どうしても実物を見てみたくなったのです。
そしてこの日は、思いがけず“もうひとつの文化”にも出会うことになりました。
碌山美術館のあとに、もう一つ行きたかった場所
安曇野の碌山美術館を訪れたあと、実はずっと気になっていた場所がありました。 それが、安曇野市天蚕センターです。
きっかけは、以前訪れた岡谷蚕糸博物館で見た、淡い黄緑色の生糸。 染めたものではなく、蚕が生み出す天然の色だと知り、その上品な色合いに心を奪われました。 虫は正直苦手ですが、この糸の正体を知りたくなり、天蚕糸を生産している安曇野天蚕センターを訪れてみたいと思うようになりました。
安曇野観光らくらくタクシーで向かう天蚕センター
駅前の観光案内所で教えてもらったのが「安曇野観光らくらくタクシー」。 定額チケット制で、エリアごとに観光施設を巡ることができます。
天蚕センターはBエリア。 Bチケットを2枚購入すれば往復できる仕組みです。
ところが最初に訪れた日は肝心のタクシーが不在で断念。 後日あらためて出直すことにしました。
週末のこの日は無事にタクシーを確保。 チケットを購入すると、案内所の方から「今年は白鳥がたくさん飛来していますよ」と教えていただき、 天蚕センターの帰りに御宝田遊水池に立ち寄る案も頭に浮かびました。
“繊維のダイヤモンド” 天蚕の世界
天蚕センターに入ると、まず目に飛び込んできたのは、籠に入った黄緑色の繭。 一般的に見かける白くてふっくらした蚕の繭とは、色も雰囲気もまったく違います。
ビデオ鑑賞のあと、係の方から説明を受けました。 白い繭を作る家蚕に対し、天蚕は日本原産の野蚕。 クヌギの葉を食べて育ち、独特の光沢をもつ淡い緑色の生糸を生み出します。
その美しさと希少性から「繊維のダイヤモンド」とも呼ばれ、 着物の刺繍など、部分的に使われることが多いそうです。 展示されている着物を見ると、その部分だけが自然な光沢で静かに輝いていました。
途絶えかけた天蚕と、受け継がれる技術
天蚕の飼育は手間がかかるうえ、収穫量も少ないため、 次第に効率の良い家蚕へと移行していった側面がありました。
さらに第二次世界大戦の影響で生産は一度途絶え、 このままでは「幻の糸」になると危惧されたそうです。 1973年、関係機関と地域の人々の尽力によって、飼育が復活しました。
天蚕糸は、家蚕の糸に比べて伸びがあり、軽く、ふくらみのある糸。 しかし織り上げるには高度な技術が必要で、 飼育・製糸・織りのどれか一つでも途絶えれば、技術の継承ができなくなってしまいます。
安曇野市天蚕センターは、こうした貴重な伝統技術を守り、 後世へ伝えていくための重要な拠点であることを知りました。
帰り道に出会った、白鳥のいる風景
感慨に包まれながら帰りのタクシーを呼ぶと、 運転手さんから「少し寄り道して白鳥を見ていきませんか」と声をかけていただき、 御宝田遊水池に立ち寄ることにしました。
シベリアから約4000kmを飛んでくる白鳥。 しかも生後3か月ほどの幼鳥も、この長い旅に挑むと知り、その生命力に驚かされます。
ここでは白鳥の飛来調査だけでなく、環境整備や保護活動を行う「アルプス白鳥の会」の方々の存在も知りました。 美しい風景は、誰かの手によって静かに守られているのだと感じます。
分野は違っても、守っているものは同じ
天蚕の糸も、白鳥が舞い降りる風景も、分野は違います。 けれどどちらも、人の手によって守られ、受け継がれてきた「日本の文化」でした。
効率や便利さだけでは残らないもの。 誰かが「残したい」と思い、手間をかけ、つなぎ続けてきたからこそ、 私は今日、これらに出会うことができたのだと思います。
アートや自然の裏側にある“人の営み”に触れられた一日。 安曇野で過ごしたこの時間は、静かに心に残る旅になりました。
















訪問日: 2026年1月31日(土)
往路:新宿駅(特急あずさ)→ 穂高駅(定額タクシー)→安曇野天蚕センター(定額タクシー)→御宝田遊水池
復路:御宝田遊水池(タクシー)→ 明科駅(JR篠ノ井線)→松本駅 ※松本城プロジェクションマッピングを観覧後、特急あずさで新宿駅へ
松本城プロジェクションマッピング2026を訪れた時の記事はこちら ↓

碌山美術館を訪れた時の記事はこちら ↓


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