かつて、個人が荷物を送りたいと思っても、今のように簡単に届けてもらえる時代ではありませんでした。
そこから「宅急便」というサービスを生み出し、私たちの暮らしに身近な存在となったヤマトグループ。
その物流拠点のひとつ、東京都大田区の「羽田クロノゲート」の見学コースに参加しました。
見学では、宅急便が届け先ごとに仕分けされていく物流の裏側だけでなく、家電製品の修理や医療機器のメンテナンス、通関など、物流の流れの中で新たな価値を加える取り組みも紹介されます。
荷物を高速で仕分けるクロスベルトソータと、それを支える人の仕事。
宅急便を送り出した会社が、現在どのように「運ぶ」だけではない物流へと広がっているのかを見てきました。
- 羽田クロノゲートの見学コースへ
- 受付棟には巨大なクロネコとウォークスルー1号車
- 100THANKSでヤマトグループの歴史をたどる
- 宅急便はどのように届け先まで運ばれる?
- 見学者コリドーから物流棟の仕分け設備を見学
- 赤いスキャナーで荷物の行き先を読み取る
- クロスベルトソータへ荷物が次々と合流
- 高速で流れる荷物を48本のシューターへ自動仕分け
- 1つのセルに荷物が2個?仕分け中のエラー
- 最大で1時間に4万8,000個の荷物を仕分け
- 20時ごろがピーク|仕分けた荷物は21時には次の場所へ
- 集中管理室から物流棟全体を24時間監視
- 羽田クロノゲートは荷物を運ぶだけではない
- 展示ホールでヤマトグループのこれからを見る
- FRAPSを体験|光った棚からお土産をピッキング
- 羽田クロノゲートの見学について
羽田クロノゲートの見学コースへ
2026年9月。東京都大田区にある「羽田クロノゲート」の見学コースに参加しました。
羽田クロノゲートは、ヤマトグループの大規模な物流拠点です。
普段利用している宅急便がどのように仕分けされ、次の拠点へ運ばれていくのかを、実際に荷物が流れる物流棟を見ながら知ることができます。
見学して特に印象に残ったのは、大量の荷物を高速で仕分ける機械だけではありませんでした。
機械に任せるところがある一方で、人が荷物を載せたり、エラーに対応したりするところもあり、物流を止めずに動かすためのさまざまな工夫を見ることができました。
受付棟には巨大なクロネコとウォークスルー1号車
受付を済ませると、見学開始までは1階の展示を自由に見ることができます。
まず目を引いたのが、巨大なクロネコ。
高さは約2m、長さは約6mもあり、記念撮影をしている人もいました。
その近くには、ヤマト運輸の「ウォークスルー車」1号車も展示されています。
宅急便の配達では、1日に何度も運転席と荷室を行き来します。
その動きを少しでも効率よくするために開発された車両で、運転席から荷室へ直接移動できる構造になっています。
ほかにも、太陽光発電やEVへの取り組み、地域によっては集配車両を活用して食品や日用品を届ける取り組みなどが紹介されていました。
100THANKSでヤマトグループの歴史をたどる
見学開始後はエスカレーターで2階へ上がり、屋外の通路を通って物流棟へ向かいます。
物流棟の入口では、受付で渡されたカードをゲートにかざして見学エリアへ入ります。
最初に見学するのは「100THANKS」。
ヤマトグループの歩みが長い年表になっていて、創業から宅急便の誕生、さまざまなサービスの登場までをたどることができます。
年表の一部は立方体の展示になっていて、持ち上げると別の面に説明が現れる仕掛けもありました。
隣の企画展示コーナーでは、これまでの正月広告が年代順に紹介されていました。
ここでは約15分の自由見学時間があり、この間にトイレを利用することもできます。
なお、最初に受付をする受付棟にはトイレがないため、見学前に覚えておくと安心です。
宅急便はどのように届け先まで運ばれる?
続いて見学者ホールへ移動し、映像を見ながら宅急便の仕組みや羽田クロノゲートの役割について説明を受けました。
荷物は、発送する地域の営業所からベースと呼ばれる大きな物流拠点へ運ばれます。
そこで行き先ごとに仕分けされ、届け先側のベースへ移動。さらに地域の営業所を経て、受取人のもとへ届けられます。
羽田クロノゲートも、この物流ネットワークを支える大きな拠点のひとつです。
物流棟の下層階では荷物の仕分けが行われ、上層階には修理やメンテナンスなど、荷物を運ぶだけではないさまざまな付加価値機能が集められています。
見学者コリドーから物流棟の仕分け設備を見学
映像で宅急便の流れを学んだあとは、見学者コリドーへ移動します。
ここからは、実際に荷物が流れている物流棟の仕分け設備をガラス越しに見学します。
物流棟の1階にはトラックが接車する着車バースが並び、その数は104。
到着した荷物はロールボックスパレットなどの単位でトラックから降ろされます。
そこから荷物を1個ずつコンベヤーへ載せるのは人の仕事です。
この作業にはロボットを導入することも検討されたそうですが、宅急便には大きさも形も異なる荷物が次々とやってきます。
そのため、ここでは人が載せるほうが効率がよく、現在も人の手で行われているとのことでした。
赤いスキャナーで荷物の行き先を読み取る
コンベヤーに載せられた荷物は1階から2階へ上がり、赤い光を放つスキャナーを通ります。
ここで読み取っているのが、荷物に貼られたバーコードの情報です。
バーコードには行き先を示す6桁のコードがあり、この情報をもとに荷物をどこへ送るのかが決まります。
スキャナーは荷物の上面、正面、左右の4方向から読み取る仕組み。
底面と後ろ側は読み取れないため、コンベヤーに荷物を載せる際には、バーコードが上になるように置くことも大切なのだそうです。
クロスベルトソータへ荷物が次々と合流
スキャナーを通った荷物は、「クロスベルトソータ」という高速仕分け機へ送られます。
見学者コリドーから眺めると、黒い長方形の板が連なったような設備がかなりの速さで動いていました。
この一つひとつが「セル」と呼ばれ、基本的に1つのセルに1個の荷物を載せて運びます。
クロスベルトソータが動く速さは時速9.7km。
ガイドさんは「一般に人が走るくらいの速さ」と言い換えていましたが、目の前を荷物が次々と流れていく様子はかなりの勢いがあります。
面白かったのが、荷物がクロスベルトソータへ合流するところです。
複数のラインから荷物が流れてきますが、そのまま次々と本線へ送り込まれるわけではありません。
コンピューターが空いているセルを割り当て、そのセルが来るタイミングに合わせて荷物を送り込みます。
見ていると、荷物がいったん待ったり、向きを変えたりしながら次々と空いているセルへ合流していきました。
高速で流れる荷物を48本のシューターへ自動仕分け
セルに載った荷物には行き先の情報が紐づけられているため、そのまま指定されたシューターまで運ばれます。
それぞれのセルには、クロスベルトソータの進行方向に対して横向きに動く短いベルトが付いています。
指定されたシューターまで来るとこのベルトが動き、荷物を横へ送り出します。
シューターは48本。
ここから行き先ごとの積み込み場所へ荷物が送られていきます。
また、ゴルフバッグやスーツケース、スキー板など、セルに載せることが難しい大きな荷物には別の「スライドソータ」が使われています。
1つのセルに荷物が2個?仕分け中のエラー
クロスベルトソータでは、基本的に1つのセルに1個の荷物を載せて運びます。
ところが見学中、別の参加者から「1つのセルに荷物が2個載っているものがある」と質問がありました。
これは正常な状態ではなく、時々起こるエラーなのだそうです。
特に軽い荷物や小さな荷物などは、セルへ送り込む際にうまく載らず、1つのセルに2個の荷物が載ったり、セルとセルの境目に荷物が載ってしまったりすることがあるとのこと。
こうした荷物はエラーとして別の場所へ送られ、最後は人の手で対応します。
大量の荷物が自動で仕分けされていく一方、すべてを機械だけに任せているわけではないことも印象に残りました。
最大で1時間に4万8,000個の荷物を仕分け
羽田クロノゲートにはクロスベルトソータが2系統あり、合わせた全長は1,070m。
1,336個のセルが時速9.7kmで動き、最大で1時間に4万8,000個の荷物を仕分けることができます。
設備は24時間365日稼働していますが、荷物が少ない時間帯には一方を止め、もう一方を動かしながらメンテナンスすることもできます。
さらに、クロスベルトソータはセルが連なった構造のため、不具合があった場合にはセル単位で取り外してメンテナンスできるとのことでした。
見学コースには実物のセルも展示されていて、大きさは約140cm×58cm。最大50kgまで載せられる丈夫なつくりになっています。
20時ごろがピーク|仕分けた荷物は21時には次の場所へ
羽田クロノゲートでは、20時ごろになると各地の営業所から荷物を載せたトラックが次々と到着し、仕分け作業がピークを迎えるそうです。
トラックから降ろされた荷物はコンベヤーへ載せられ、スキャン、仕分けを経て、今度は行き先ごとのトラックへ積み込まれます。
そして21時ごろには、仕分けを終えた荷物を載せたトラックが次の拠点へ向けて出発します。
映像では、航空輸送で使用するコンテナを移動させる「ボールデッキ」も紹介されました。
床に小さなボールが並んだ設備で、重いコンテナでも床の上を滑らせるように動かすことができます。
このほか、冷蔵の荷物に使われる専用のクロスベルトソータも紹介されていました。
集中管理室から物流棟全体を24時間監視
大量の荷物を自動で仕分けする設備を支えているのが「集中管理室」です。
普段は中が見えない曇りガラスになっていますが、見学時にはガラスが透明に切り替わり、室内を見ることができました。
中には24台のモニターが並び、仕分け設備の各所や、1階にある104の着車バースなどを監視しています。
見学した時には3人のスタッフが勤務していました。
24時間365日、3交代で物流棟を見守っているそうです。
設備でエラーが発生すると、カメラでその場所を確認し、無線で現場のスタッフへ連絡して対応を指示します。
さらに、どの着車バースが使用中なのかを確認してトラックを誘導したり、天候を確認して運行に関する指示を出したりすることも集中管理室の役割です。
荷物の仕分けそのものは高度に自動化されていますが、その動きを監視し、異常が起きた時に判断しているのは人でした。
羽田クロノゲートは荷物を運ぶだけではない
物流棟の上層階では、荷物を仕分けて運ぶだけではない、さまざまな付加価値サービスが行われています。
例えば、家電メーカーと連携し、ヤマトグループのスタッフが家電製品を修理するサービスがあります。
修理する製品をいったんメーカーへ送り、修理後に再び配送するのではなく、物流拠点の中で修理することで、荷物を余分に往復させる必要がなくなります。
医療分野では、手術などに使われる医療機器の洗浄やメンテナンスにも対応しています。
ほかにも、海外から届いた荷物の通関、必要なものだけを印刷するオンデマンド印刷、超低温での輸送などが紹介され、映像では印鑑を作る様子も見ることができました。
見学するまでは「ヤマト=荷物を運ぶ会社」というイメージが強かったので、物流拠点の中でここまで多くの作業が行われていることには驚きました。
羽田クロノゲートでは、荷物をいったん止めて別の場所で作業するのではなく、物流の流れの中で修理や加工などの価値を加え、そのまま次の配送へつなげる「止めない物流」を目指しています。
展示ホールでヤマトグループのこれからを見る
最後に案内されたのが展示ホールです。
ここから再び写真撮影ができるようになりました。
ホール中央には板状のスクリーンがあり、プロジェクションマッピングを使った映像で、これからの物流やヤマトグループの取り組みが紹介されます。
壁にはさまざまなテーマの言葉が並び、その下にある引き出しを開けると、関連する資料を見ることができる仕掛けになっていました。
FRAPSを体験|光った棚からお土産をピッキング
見学の最後には、物流棟でも使われている「FRAPS(フラップス)」というピッキングシステムを体験します。
受付で渡されたカードのバーコードを読み取ると、棚のひとつにランプが点灯。
光った場所から指定されたものを取り出すという仕組みです。
実際の物流では、たくさんの商品が並ぶ棚の中から必要なものを探し回るのではなく、ランプによって取り出す場所が分かるようになっています。
見学では、この仕組みを使ってお土産をピッキングしました。
何が出てくるかは人によって異なるようで、私が受け取ったお土産は、ヤマトグループのトラックが描かれたA4サイズの透明なクリアファイルと、クロネコ・シロネコの小物でした。
高速で荷物を仕分けするクロスベルトソータから、エラーに対応する人、物流棟全体を見守る集中管理室、そして「運ぶ」以外のさまざまなサービスまで。
普段何気なく利用している宅急便の裏側を、実際に動いている物流施設で見ることができる見学でした。
羽田クロノゲートの見学について
羽田クロノゲートの見学コースは事前予約制です。
開催日や見学時間、予約方法などは変更される場合があるため、訪問前にヤマトグループの公式サイトで最新情報を確認してください。













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