金沢から能登半島へ──青く澄んだ日本海を巡る定期観光「能登路」

アートと文化

金沢滞在中に参加したJR西日本の定期観光「能登路」。
かつて鉄道の急行名に由来するその名の通り、能登半島の外浦を1日かけて巡る旅です。
春のやわらかな光の中、穏やかにきらめく日本海と能登の文化を感じる、心に残るひとり旅となりました。


2023年3月、金沢滞在中にJR西日本が主催する定期観光「能登路」に参加しました。 このコース名の「能登路」は、かつて能登方面へ走っていた急行列車「能登路」から名付けられたもの。
能登半島の外浦(日本海側)を1日かけてめぐるコースで、バスは金沢駅を出発し、美しい能登の名所を次々と巡ります。


金沢駅を出発、千里浜なぎさドライブウェイを走る

朝、金沢駅を出発したバスは、まず日本で唯一、砂浜を車で走れる「千里浜なぎさドライブウェイ」へ。 春の柔らかな日差しを受け、穏やかに波打つ海岸線を進む時間は爽快そのもの。
潮の香りを感じながら、旅のはじまりを実感します。


能登金剛・巌門と機具岩

次に訪れたのは、自然が生み出したダイナミックな断崖「能登金剛(巌門)」。
遊歩道を歩くと、岩の間から見える日本海が青く輝いていました。
この時期にこんなにも波がなく、穏やかで澄んだ海を見るのは珍しいことだそうです。
車窓から見えた「能登二見岩(機具岩)」も、青空と海に映えて美しい姿を見せてくれました。


總持寺祖院での昼食と静寂のひととき

お昼は、曹洞宗の大本山として知られる「總持寺祖院」にて。
精進料理の昼食をいただきましたが、出汁がとてもよく効いており、丁寧に作られた味わい深い食事でした。
境内には静かな空気が流れ、木々の緑とお寺の佇まいが心を落ち着かせてくれます。


白米千枚田とすず塩田村へ

午後は、世界農業遺産にも登録されている「白米千枚田」へ。
ちょうど田植えの準備が始まる頃で、整備された田んぼが海に沿って段々に広がる光景は見事でした。
晴れた空の下、海の向こうには「七ツ島」の姿も。
続いて訪れた「すず塩田村」では、日本で唯一の「揚げ浜式塩田」を見学。
人の手で塩をつくる昔ながらの製法に、能登の暮らしの息づかいを感じました。


輪島の駅跡に残る“シベリア行き”の遊び心

旅の最後は、かつての「輪島駅」跡地へ。
現在は「道の駅 輪島」となっており、店内奥には線路跡が残されています。
掲げられた「次の駅 シベリア」という表示は、どこかユーモラスで温かい気持ちに。
かつてここから多くの旅人を乗せた鉄路の名残に、少しの郷愁を感じました。


能登の美しさと復興への願い

公共交通機関だけでは訪れにくい能登ですが、こうした定期観光バスのおかげで、
効率よく名所を巡ることができました。
自然の美しさ、人々のあたたかさ、そして土地の文化にふれることができる「能登路」は、
まさに旅の原点のようなひととき。
2025年現在、震災の影響で定期観光はまだ再開されていませんが、
一日も早く再びこのコースを訪れられる日が来ることを願っています。


── 東京発ひとり旅で出会った、穏やかで青い能登の時間でした。

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