北星鉛筆の工場見学「東京ペンシルラボ」へ|鉛筆ができるまでと木の粘土体験

北星鉛筆の工場見学施設「東京ペンシルラボ」の外観 大人の社会科見学

2026年9月。東京都葛飾区にある北星鉛筆の工場見学施設「東京ペンシルラボ」を訪れました。

鉛筆の芯は何からできているのか、木の板にどうやって芯を入れ、六角形の鉛筆に仕上げていくのか。 映像や実物の材料で製造工程を学び、実際に稼働している工場も見学しました。

鉛筆の歴史や東京の鉛筆産業、製造時に出るおが屑の再利用、木の粘土「もくねんさん」の工作体験まで、工場見学で知ったことを紹介します。


北星鉛筆の工場見学「東京ペンシルラボ」へ

東京ペンシルラボは、京成押上線の四ツ木駅から徒歩約7分。 工場見学施設としては駅から近く、公共交通機関でもアクセスしやすい場所にあります。

建物の外壁には赤・緑・黄色の大きな鉛筆が描かれ、敷地内の案内表示にも鉛筆が使われています。 ここでは、鉛筆ができるまでの工程を映像や展示で学んだあと、実際の工場を見学することができます。

この日の見学は、まず約15分のビデオからスタート。 続いて北星鉛筆の会長さんから、鉛筆の歴史や特徴、会社で考案した製品などについて、クイズを交えながら話を聞きました。

その後は1階と2階の工場へ。 鉛筆の木軸を加工する工程や、鉛筆が並んで流れていく塗装ラインなどをガラス越しに見学しました。 工場見学のあとは鉛筆神社を見学し、質問の時間も設けられていました。

さらに今回は、鉛筆を作る際に出るおが屑を再利用した粘土「もくねんさん」の工作体験にも申し込んでいました。 鉛筆が作られる工程だけでなく、製造時に出るおが屑がどのように活用されているのかまで知ることができる見学です。

北星鉛筆の始まりと、東京の鉛筆づくり

工場を見学する前に、北星鉛筆の歴史や東京の鉛筆産業についても話を聞きました。

北星鉛筆のルーツは北海道にあります。 もともと杉谷家は北海道で木材業を営み、豊富な木材を使って鉛筆用の板を製造し、関東などへ出荷していました。

その取引先の一つが、東京の「月星鉛筆」でした。 関東大震災で工場が被災した月星鉛筆は北海道で事業を再開し、その後、杉谷家が事業を引き継ぎます。

現在の北星鉛筆株式会社が東京で設立されたのは、1951(昭和26)年。 社名の「北星」は、北海道の「北」と、月星鉛筆の「星」に由来しています。

そして意外だったのが、鉛筆が東京の地場産業だということ。 見学では、最盛期には約200社の鉛筆メーカーがあり、現在も国内約30社のうち約24社が東京にあると教えてもらいました。 荒川区、足立区、葛飾区など、東京の東部に鉛筆メーカーが集まっています。

黒鉛と粘土から鉛筆の芯を作る

鉛筆づくりは、中心に入る芯から始まります。 見学ではビデオや実物の材料を見ながら、芯ができるまでの工程を教えてもらいました。

鉛筆の芯の主な材料は、黒鉛と粘土です。 これに水を加えてよく混ぜ、ローラーですりつぶしながら均一な状態にしていきます。

芯の硬さは、黒鉛と粘土の配合によって変わります。 黒鉛の割合が多いほど柔らかく濃い芯になり、粘土が多くなるほど硬い芯になります。 北星鉛筆では4Hから6Bのほか、さらに柔らかい10Bの鉛筆も扱っています。

混ぜ合わせた材料は、まず太い円柱状にまとめられます。 これを機械に入れ、水鉄砲のように細い穴から押し出すことで、鉛筆の芯と同じくらいの太さになります。 押し出された直後は、巻き取れるほど柔らかい状態です。

必要な長さに切って乾燥させたあと、約1000℃の高温で一昼夜焼き、さらに油を染み込ませて書き味を整えます。

一方、色鉛筆の芯は焼かずに作られるため、黒鉛の鉛筆よりも柔らかく、しなりがあります。

なお、北星鉛筆では芯そのものは製造しておらず、山梨県の芯メーカーで作られたものを使用しています。 工場では、この芯を木の軸に入れて鉛筆へと仕上げていきます。

スラットに芯を挟み、鉛筆の形に削る

芯の次は、鉛筆の木の部分です。 北星鉛筆では、鉛筆の軸にインセンスシダーという木材を使用しています。

工場に届くのは、「スラット」と呼ばれる約18.5cm×7.5cmの薄い板です。 まずスラットの表面に、鉛筆の芯を入れるための細長い溝を何本も削ります。

溝に接着剤を塗り、横からスライドさせて芯を1本ずつ入れたら、その上にもう1枚のスラットを重ねます。 芯を木の板でサンドイッチした状態でプレスし、一晩かけて接着剤を乾燥させます。

翌日、貼り合わせた板を機械に通して削ると、何本もの鉛筆に分かれていきます。 一度に鉛筆の形を完成させるのではなく、精度を高めるため片側ずつ削って成形するそうです。

この工程で、六角形や丸形、四角形など鉛筆の軸の形も決まります。 一般的な鉛筆に六角形が多い理由について、見学では「鉛筆は親指・人差し指・中指の3本で持つため、3の倍数である六角形が持ちやすい」と教えてもらいました。

一方、芯が柔らかい色鉛筆には丸い軸が多く使われています。 木の厚みを芯の周囲で均一にすることで、柔らかい芯を保護しやすくなるためです。

こうして芯を木で挟み、1本ずつの形に削ることで、ようやく見慣れた鉛筆の姿になってきます。

塗装を重ねて鉛筆を仕上げる

木の軸が鉛筆の形になったら、次は塗装と仕上げの工程です。 工場の2階では、実際に鉛筆が並んで流れていく塗装ラインを見ることができました。

鉛筆は1本ずつ塗料をつけたあと、ゴムに開けられた穴を通っていきます。 このゴムが余分な塗料を落とす役目をしていて、表面に均一に塗料を残すことができます。

一度塗って終わりではありません。 塗装と乾燥を繰り返し、通常は6〜7回、多いものでは12回ほど重ね塗りするそうです。 さらに表面を仕上げる塗装も行われ、普段手にしている滑らかな鉛筆になっていきます。

塗装を終えた鉛筆は、端を約1mm切りそろえて長さを整えます。 その後、金や銀などの箔を使って「HB」「B」といった硬度や文字を印刷します。 2色を使う場合は、鉛筆を回転させて別の面に印刷する仕組みになっていました。

模様の入った鉛筆には、印刷したフィルムを巻いて仕上げるものもあります。 工場には消しゴムを取り付けるためのラインもありましたが、この日は稼働していませんでした。

色鉛筆は芯が柔らかく、尖らせすぎると折れやすいため、適切な削り方が分かるよう、あらかじめ先端を少し削った状態で販売されています。

70年前から現役、鉛筆を数える「升」

工場で意外だったのが、大量の鉛筆を数えるために今も使われている「升」です。

V字型の升に鉛筆を1本ずつ並べていくと、側面につけられた目盛りによって本数が分かる仕組みになっています。 これは、約70年前から変わらない方法だそうです。

機械で数えるのではなく、今でもこの方法が最も効率がよいとのこと。 会長さんも「昔の人は頭がいいね」と話していました。

徳川家康も使った鉛筆、その歴史をクイズで学ぶ

工場を見学する前には、会長さんから鉛筆にまつわるクイズも出されました。

その一つが、「日本で最初に鉛筆を使ったとされる人物は誰でしょう?」という問題。 答えは徳川家康です。

家康が使ったとされる鉛筆は現在も久能山東照宮博物館に所蔵され、家康の愛用品の一つとして伝えられています。 現在の鉛筆とは異なる、初期の鉛筆です。

その後、1795年にフランスのニコラ=ジャック・コンテが、黒鉛と粘土を混ぜて芯を作る製法を開発しました。 黒鉛と粘土の配合を変えるという考え方は、現在の鉛筆の芯にもつながっています。

会長さんの話にはナポレオンやベートーベンも登場し、鉛筆の歴史をクイズ形式でたどっていきました。 普段何気なく使っている鉛筆ですが、現在につながる製法には200年以上の歴史があります。

鉛筆の特徴として紹介されたのが、芯が残っていて削ることができれば書き続けられることです。 インクを使わず、紙が多少濡れていても書くことができます。

選挙の投票所に鉛筆が用意されていることも話題になりました。 シャープペンシルは芯が入っているか、ボールペンはインクが出るか、実際に書いてみるまで分からないことがあります。一方、鉛筆は芯が見えているため、試し書きをしなくても書けることが分かります。 投票用紙で試し書きをするわけにはいかないため、鉛筆が使われているという話でした。

鉛筆の「不便」を考えて生まれた製品

昔から基本的な作り方が大きく変わっていない鉛筆にも、不便なところがあります。 その一つが、使っているうちに芯が丸くなり、削らなければならないことです。

そこで北星鉛筆が開発したのが「大人の鉛筆」です。 木の鉛筆のような書き味を楽しみながら、芯が短くなったら繰り出して使うことができ、一般的な鉛筆のように木の軸を削る必要がありません。

色鉛筆にも、削る手間を減らした「大人の水彩色鉛筆」があります。 色鉛筆として描いたあとに水筆で色をぼかすほか、先を尖らせるために削った芯の粉を水で溶かし、絵の具のように使うこともできます。

さらに、鉛筆を削る道具そのものにも工夫がありました。 鉛筆削り「634(ムサシ)」は、木の部分と芯を2段階に分けて削る仕組みです。 木の部分と芯を分けて削ることで鉛筆のブレを抑え、削っている途中に芯が折れにくいよう工夫されています。 刃が傷んだ場合は、刃そのものではなく、刃が付いた部分を部品ごと交換するため、刃に直接触れる必要もありません。

鉛筆を作るだけではなく、使うときに感じる不便を見つけ、どうすれば使いやすくなるのかを考えて製品につなげていることも、今回の見学で印象に残った点でした。

鉛筆づくりで出る大量のおが屑、その使い道を考える

鉛筆を作る工程では、木材を削るため、材料の約40%がおが屑になります。 北星鉛筆では、この大量のおが屑を捨てずに活用する方法を考えてきました。

以前は近くの銭湯が工場までおが屑を取りに来て、風呂を沸かす燃料として使っていたそうです。 しかし、やがて銭湯が取りに来なくなり、別の使い道を考える必要が出てきました。

そこで、おが屑を圧縮して固め、キャンプなどで使える燃料にしました。 さらに細かく粉末にすると、今度は線香の材料としても利用されるようになりました。

そして、おが屑から開発されたのが木の粘土「もくねんさん」です。 柔らかいうちは粘土のように形を作ることができ、乾燥すると木のように硬くなります。

会長さんが子どもたちに何度も話していたのが、「ぼーっとしていてはダメ。常に考える。思いついたら行動する」ということでした。

鉛筆を作ると出てくるおが屑も、捨てるものとして見るのではなく、「何かに使えないか」と考える。 燃料から線香、さらに木の粘土へと使い道を広げてきた話を聞くと、その言葉が北星鉛筆のものづくりそのものにつながっていることが分かりました。

鉛筆神社と、短くなった鉛筆を納める鉛筆地蔵

工場の敷地内には、鉛筆をまつる「鉛筆神社」もあります。

神社を作る際には神職の方に相談し、鳥居の形や色なども確認しながら作ったそうです。 よく見ると鳥居にも鉛筆を思わせる意匠が取り入れられています。

鳥居のそばに立つ鉛筆形の碑には、「我が身を削って人のため 鉛筆の道」という言葉が刻まれていました。 両脇の花器まで鉛筆の形をしています。

境内には「鉛筆地蔵」もあり、使って短くなった鉛筆5本を納めると、北星鉛筆のオリジナル鉛筆1本と交換することができます。 最後まで使った鉛筆を納める場所が、工場の中に用意されています。

毎年11月23日には神職の方を招いて鉛筆供養が行われ、「鉛筆感謝祭」も開催されているそうです。

おが屑から作った「もくねんさん」で工作

工場見学のあと、希望者は木の粘土「もくねんさん」を使った工作も体験できます。

「もくねんさん」は、鉛筆を作るときに出るおが屑を再利用して作られた粘土です。 館内には、もくねんさんで作られた人形やリース、クリスマスツリーなど、さまざまな作品が並んでいました。

工作では、柔らかいもくねんさんを型に詰めて形を作ります。 動物や花、乗り物など型の種類が多く、いくつか選んで作ることができました。

完成したばかりの作品はまだ柔らかいため、そのまま持ち帰って乾燥させます。 完全に乾くまでの目安は約3日です。

自宅で乾かしている間には、ふわっと木の香りもしました。 乾燥すると硬くなり、もともと鉛筆を作るときに出たおが屑が、再び木のような質感の作品になります。


受付では、見学の記念品として用意された商品の中から一つを選ぶことができました。 私が選んだのは、2本入りのマーブル鉛筆です。

一見すると木軸の鉛筆ですが、芯の断面を見ると赤や青、緑、黄色などが混ざったカラフルな芯になっています。 工場で鉛筆ができるまでの工程を知ったあとに改めて見ると、芯や木軸にもつい目がいきました。

持ち帰った「もくねんさん」の作品も、数日後にはしっかり乾燥しました。 鉛筆工場で出たおが屑から作ったものが、こうして手元に残りました。

鉛筆の芯の材料となる黒鉛と粘土
鉛筆の芯は、黒鉛と粘土を混ぜて作られます
黒鉛と粘土を混ぜて円柱状にまとめた鉛筆の芯の材料
混ぜ合わせた材料を円柱状にまとめ、細い穴から押し出して芯の太さにします
スラットから芯を入れて鉛筆の軸に加工するまでの4工程
①スラット ②溝を削ったスラット ③芯を入れた状態 ④鉛筆の形に削った状態
北星鉛筆の工場で鉛筆が並んで流れる塗装ライン
工場2階の塗装ライン。鉛筆は塗装と乾燥を繰り返して仕上げられます
塗装した鉛筆をゴムの穴に通して余分な塗料を落とす工程
鉛筆をゴムの穴に通し、余分な塗料を落として表面を均一にします
北星鉛筆で大量の鉛筆を数えるために使われているV字型の升
約70年前から使われている鉛筆を数える「升」。側面の目盛りで本数が分かります
北星鉛筆が開発した大人の鉛筆などの製品
鉛筆の「削る」という不便から考案された「大人の鉛筆」など、さまざまな製品も紹介されました
鉛筆づくりで出るおが屑を、圧縮したものと粉末にしたもの
北星鉛筆の工場敷地内にある鉛筆神社と鉛筆形の木碑
工場の敷地内にある鉛筆神社。鳥居にも鉛筆を思わせる意匠があります
使って短くなった鉛筆を納める北星鉛筆の鉛筆地蔵
短くなった鉛筆5本を納めると、北星鉛筆のオリジナル鉛筆1本と交換できます
鉛筆のおが屑から作った木の粘土「もくねんさん」の工作体験
柔らかい「もくねんさん」を好きな型に詰めて形を作ります
北星鉛筆の工場見学で作った木の粘土「もくねんさん」の乾燥後の作品
持ち帰った「もくねんさん」の作品。約3日乾燥させると硬くなり、木のような質感になりました
北星鉛筆の工場見学記念品として選んだ2本入りのマーブル鉛筆
受付で選んだマーブル鉛筆。芯の断面には赤や青、緑、黄色など複数の色が見えます

🏭 ものづくりの工程を知る見学

身近な製品も、材料から完成するまでにはいくつもの工程があります。 工場や展示施設で、普段は見えない製造や印刷の工程を見てきました。

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