2026年10月22日、東京都北区の飛鳥山公園にある青淵文庫(せいえんぶんこ)と晩香廬(ばんこうろ)を見学しました。 どちらも実業家・渋沢栄一の旧邸宅に残る建物で、国の重要文化財に指定されています。
以前、国立印刷局のガイドツアーに参加した帰りに立ち寄ったことがありましたが、その日は蜂の影響で晩香廬が見学できず、入館を見送っていました。 入館券は渋沢史料館・青淵文庫・晩香廬の3館共通券となっているため、今回はようやく3館を見学することができました。
青淵文庫の装飾タイルやステンドグラス、晩香廬の暖炉や木製建具など、建物に残る意匠を中心に紹介します。
飛鳥山にあった渋沢栄一の邸宅「曖依村荘」
青淵文庫と晩香廬は、JR王子駅から徒歩圏内にある飛鳥山公園の一角に位置しています。 どちらも渋沢史料館の近くにあり、同じ敷地内で見学できます。
最初に渋沢史料館へ向かいました。 館内では渋沢栄一の生涯や事業、社会活動などを紹介しています。 2階の常設展示では、91歳までの生涯を年齢ごとにたどる構成になっており、天井から吊り下げられた数字が目を引きました。
今回は史料館を簡単に見学し、青淵文庫と晩香廬へ向かいました。
現地の資料によると、渋沢栄一は1879年に飛鳥山の地に賓客接待用の別邸を構えました。 その後、敷地内に日本館、西洋館、茶室、文庫などを建設し、1901年からは本邸として使用しています。
この邸宅は「曖依村荘(あいいそんそう)」と呼ばれ、敷地面積は約28,000平方メートルにも及んだそうです。 現在の飛鳥山公園全体が邸宅だったわけではありませんが、想像していた以上の広さに驚きました。
1945年4月の空襲によって建物の多くが焼失し、現在は青淵文庫と晩香廬の2棟が残っています。 かつての邸宅の配置図を見ると、今回見学する2棟は広大な敷地の一部にすぎなかったことがわかります。
青淵文庫|渋沢家の家紋を取り入れた装飾タイル
青淵文庫は、渋沢栄一の傘寿(80歳)と男爵から子爵への昇格を祝って竜門社の会員から贈られ、1925年に竣工した建物です。 渋沢栄一が収集した書籍を収めるための書庫として建てられました。
設計は中村田辺建築事務所、施工は清水組。 鉄筋コンクリート造2階建てで、国の重要文化財に指定されています。
外観は石造りのような重厚な印象ですが、正面の窓まわりには細かな装飾タイルが使われています。 室内に入ると、同じ意匠が壁や柱にも繰り返し施されていました。
この装飾タイルのモチーフは、渋沢家の家紋「丸に違い柏」です。 柏の葉を取り入れた図柄など、3種類の意匠が使われています。
現地の解説によると、建物の内外には約2,800枚もの装飾タイルが使用されているそうです。これらは泰山製作所に製作が依頼され、主に「泰平タイル」で製作されたもので、建物の外壁から室内の細部まで、家紋を取り入れた装飾が続いています。
青淵文庫の閲覧室|ステンドグラスと細部の装飾
閲覧室に入ると、壁一面に並ぶ縦長の窓と、その上部にはめ込まれたステンドグラスが目に入りました。 窓の間には柏の葉をモチーフにした装飾タイルが並び、天井にはシャンデリアが吊り下げられています。
閲覧室には4枚のステンドグラスが並び、装飾タイルと同じく、渋沢家の家紋「丸に違い柏」をモチーフにした意匠が取り入れられています。
さらに、両端のステンドグラスには、それぞれ外側に「のぼり竜」と「くだり竜」が描かれています。 竜の部分はカーテンに隠れていて正面からは見えにくく、斜めから覗き込むようにして確認しました。
室内では、木製の腰壁や漆喰の装飾にも目が向きます。 壁の上部には植物を思わせる模様が施され、装飾タイルと木彫りが組み合わされた部分もありました。
閲覧室の出入口には「青淵文庫」と書かれた扁額が掲げられています。 扉の周囲にも柏の葉の装飾タイルが使われており、建物全体で意匠が統一されていることがわかります。
一方、腰板の一部には装飾的な金属製の格子が取り付けられていました。 現地の解説によると、これは電気ストーブで、内部にはヒーターと蒸発皿が設けられ、暖房とともに室内の乾燥を防ぐ工夫もされていたそうです。
青淵文庫の階段と書籍を守る防火設備
青淵文庫の2階は見学できませんでしたが、階段部分を見ることができました。 曲線を描く階段には石材が使われ、手すりも緩やかな曲線を描いています。 階段の途中には縦長の窓があり、吊り下げられた照明も印象的でした。
書庫として建てられた青淵文庫には、貴重な書籍を火災から守るための設備も設けられています。 各部屋の扉や窓には防火扉が備えられ、鉄線入りのガラスも使用されていました。
実際に鉄製の扉を見ると、閲覧室の華やかな装飾とは異なる、書庫としての実用的な造りを確認できます。
また、玄関の照明にも細かな金属装飾が施されていました。 現地の解説パネルでは、見落としやすい場所にも意匠が取り入れられていることが紹介されており、建物の隅々まで目を向けながら見学しました。
晩香廬|渋沢栄一の喜寿を祝って贈られた洋風茶室
青淵文庫の見学を終え、続いて晩香廬へ向かいました。
晩香廬は、渋沢栄一の喜寿(77歳)を祝って、1917年に清水組の清水満之助から贈られた洋風茶室です。 設計は田辺淳吉、施工は清水組。 木造平屋建てで、延べ床面積は約72平方メートルです。
赤い瓦屋根と深い軒が特徴的で、外壁には木材や煉瓦が組み合わされています。 石造りのような外観を持つ青淵文庫とは、建物の雰囲気が大きく異なります。
木製の格子戸から入ると、赤い床タイルが敷かれた玄関がありました。 正面左には事務室、右手には化粧室があり、木製の建具やガラスの装飾が目に入ります。
化粧室の建具には、幾何学模様のステンドグラスが使われていました。 客室だけでなく、こうした場所にも細かな意匠が取り入れられています。
玄関から一段高くなった客室へ進むと、大きなテーブルや椅子が置かれ、窓からは庭園の緑が見えました。 天井には木の梁が渡され、四角い吊り下げ式の照明が取り付けられています。
現地の解説によると、晩香廬は渋沢栄一が賓客を迎える場所として使用していた建物で、室内には長寿を願う意匠などが取り入れられています。
晩香廬の暖炉と室内に残る装飾
客室で特に目を引いたのは、壁面に設けられた大きな暖炉です。 暖炉の周囲には青緑色や褐色のタイルが使われ、中央には菱形の装飾が施されています。
暖炉の左右には幾何学模様のガラス窓があり、木製の建具と組み合わされています。 暖炉の上部には文字が記された板も掲げられており、装飾の多い空間になっていました。
天井の梁に沿って施された白い装飾にも、植物の模様が繰り返し使われています。 室内の照明や窓のガラスにも細かな意匠があり、客室全体を見渡すだけでなく、近づいて細部も確認しました。
また、窓に取り付けられたカーテンとロールスクリーンは、創建当時の写真や記録をもとに復原されたものだそうです。 現地の解説パネルには、当時使用されていた素材や製法を調べながら復原した経緯が紹介されていました。
















🏛️ 東京の近代建築を訪ねる
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鳩山会館では小川三知によるステンドグラスを、自由学園明日館では特徴的な窓や暖炉などを見学しました。

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