2026年10月22日、東京都文京区にある鳩山会館を訪れました。
鳩山会館は、建築家・岡田信一郎が設計した洋館で、かつて鳩山一郎とその家族が暮らした邸宅です。館内には小川三知が手がけたステンドグラスが残されており、洋館建築とともに見学できることから訪れました。
今回は、第一・第二応接室や食堂、サンルームなどの室内装飾をはじめ、法隆寺五重塔を描いたステンドグラス、庭園から眺める洋館の外観など、実際に見学した様子を紹介します。
緑に囲まれた坂道を上り、鳩山会館へ
駅から歩いて鳩山会館へ向かうと、大きな門が現れました。
門を入っても建物は見えず、木々に囲まれた舗装路が続いています。道は緩やかに曲がりながら坂を上っていき、玄関までは思っていた以上に距離がありました。
歩いている間は鳥のさえずりが絶えず聞こえ、ときどき木々の間に鳥の姿も見えました。都内にいることを忘れそうなほど緑が多く、森の中を歩いているような印象を受けました。
坂を上りきると洋館が姿を現します。玄関の近くには大きなヒマラヤ杉もあり、建物は豊かな緑に囲まれていました。
玄関上部には、牡鹿のブロンズ像を挟むように白い鳩の装飾が配されています。牡鹿はレプリカで、オリジナルは館内に展示されていました。
また、外観の窓に取り付けられた鉄製の格子にも、中央に鳩をかたどった意匠が見られました。ステンドグラスだけでなく、建物の外側にも鳩のモチーフが取り入れられています。
岡田信一郎が設計した洋館と鳩山会館の歴史
鳩山会館は、鳩山一郎の邸宅として建てられた洋館です。設計を手がけたのは、近代日本の建築家・岡田信一郎です。
建物は地下1階、地上2階建てで、三角屋根の下には屋根裏部屋も設けられています。
館内で上映されていた紹介映像によると、鳩山一郎の妻・薫夫人は1982年に亡くなるまでこの邸宅で暮らしていました。
その後、建物は使われなくなり、一時は荒廃した状態になりましたが、1995年に大規模な修復工事が行われ、翌1996年から一般公開が始まりました。
現在は1階と2階を見学でき、応接室や食堂などの室内装飾に加え、鳩山家に関する展示も公開されています。ただし、一部の展示室は撮影禁止となっています。
玄関ホール|赤絨毯の階段と鳩のステンドグラス
洋館の玄関扉を入ると、さらに室内へと続く階段がありました。
赤い絨毯が敷かれた階段は、石張りの壁と重厚な手すりに囲まれています。門から玄関までの長い坂道に続き、建物に入ってからも階段を上っていく造りが印象的でした。
玄関ホールから見上げると、扉の上方には横長のステンドグラスがはめ込まれています。
小川三知が手がけた作品で、鳩とコリント風の柱を組み合わせた図柄です。玄関の明かり取りとして設けられており、ホール側から見ると、青を基調としたガラスに鳩の姿が浮かび上がります。
現地の解説によると、光の当たり方によってガラスの色の変化も楽しめるとのことでした。
また、玄関ホールには、照明器具によって天井に模様が映し出される仕掛けもあります。
照明の下部にはガラスがはめ込まれており、反射した光が天井に影をつくる仕組みです。実際に見上げると、照明の周囲に曲線的な模様が大きく広がっていました。
第一応接室|アダム様式の装飾と紋章のステンドグラス
1階の第一応接室は、濃い茶色の木製装飾を基調とした落ち着いた雰囲気の部屋です。
壁には木製の腰壁が巡り、天井には梁が見えます。暖炉やシャンデリアも備えられ、重厚感のある室内となっていました。
室内装飾には、18世紀のスコットランドで発展した古典主義的なアダム様式が取り入れられています。
暖炉の両側には、小川三知による紋章入りのステンドグラスがあります。
3羽の鳩を配した紋章を中心に色ガラスが組み合わされ、周囲には菱形の格子模様が施されています。
現地の解説パネルによると、透明なガラスを通して窓の外の木々が見えるよう工夫されており、庭の緑を借景として楽しめる造りになっています。
第一応接室では、鳩山会館の建物や鳩山家に関する紹介映像も上映されており、自由に鑑賞できました。
第二応接室|花柄のステンドグラスと鳩山一郎愛用のソファ
第一応接室に隣接する第二応接室は、淡いクリーム色を基調とした明るい部屋です。
濃い木製装飾が印象的だった第一応接室とは雰囲気が異なり、室内には鳩山一郎が愛用していたソファが残されています。
サンルームに面した窓の上部には、花柄のステンドグラスが4枚並んでいます。
それぞれ円形の意匠の中に花が描かれ、第一応接室の紋章とは異なる華やかな装飾になっていました。
同じ1階の応接室でも、内装の色使いやステンドグラスの図柄によって、部屋ごとの違いを楽しめます。
食堂|ライチの実を描いたステンドグラス
食堂にも、小川三知によるステンドグラスが残されています。
こちらはライチの実をモチーフとした4枚の作品です。円形の中に枝葉と果実が描かれており、現地の解説では、食堂にふさわしく「食べる」ことをテーマにした図柄と紹介されていました。
食堂には濃い色の木製建具やシャンデリアがあり、隣接するサンルームとの間には大きな開口部が設けられています。
第一応接室の紋章、第二応接室の花柄、食堂のライチと、部屋によってステンドグラスのモチーフが異なるのも、鳩山会館の見どころの一つです。
第一応接室、第二応接室、食堂は、それぞれ扉で仕切られていますが、扉には360度回転する蝶番が使われています。
扉を大きく開くことで間口が広がり、3つの部屋を一続きの広い空間として使える仕組みです。これは日本家屋の特徴を取り入れたものと説明されていました。
サンルーム|アーチ窓から光が入る明るい空間
第二応接室と食堂に面して、サンルームが設けられています。
白を基調とした室内には大きなアーチ窓が並び、外の庭園を望むことができます。
窓の上部には曲線を組み合わせた装飾が施され、床にも細かな模様が見られました。
濃い木製装飾が使われた食堂からサンルームを見ると、室内の明暗や色使いの違いがよくわかります。
食堂側からはライチ、第二応接室側からは花柄のステンドグラスが見え、それぞれの部屋とサンルームがつながっていることも確認できました。
階段の踊り場|法隆寺五重塔と鳩のステンドグラス
2階へ向かう階段の踊り場には、鳩山会館でも特に大きなステンドグラスがあります。
描かれているのは、奈良の法隆寺五重塔を中心とした風景と、その上空を舞う鳩です。
青い空と雲、山並みを背景に五重塔が描かれ、洋館の中にありながら日本的な風景を表現した作品となっています。
こちらも小川三知の作品です。
現地の解説によると、五重塔の赤い裳階(もこし)の部分にはガラスを二重に重ねる技法が用いられ、立体感が生まれるよう工夫されています。
階段の途中から見上げると、ステンドグラスの前には照明器具が下がり、周囲の壁や木製の手すりとともに大きな空間を構成していました。
作品に近づいて図柄を眺めたり、少し離れて階段全体と一緒に見たりと、見る位置によって印象が変わる場所でした。
2階の大広間と鳩山家の記念室
2階には、かつて書斎や客間、寝室、和室などが設けられていました。
現在は部屋の用途が変更され、旧書斎は鳩山一郎記念室、旧客間は鳩山薫記念室、旧和室は鳩山威一郎記念室として公開されています。
これらの記念室は見学できますが、撮影は禁止されています。
一方、かつて3つに分かれていた寝室は、現在では一続きの大広間となっています。
大広間は淡い色調の明るい室内で、装飾のある柱やシャンデリア、大きな窓が印象的でした。
窓からは敷地内の緑も見え、1階の応接室とは異なる雰囲気を感じられます。
現在、この大広間は貸し出しにも利用されています。
庭園から眺める洋館|屋根のミミズクにも注目
館内を見学したあとは、庭園に出て洋館の外観を眺めました。
庭園側から見ると、建物には大きなアーチ窓が並び、室内で見学したサンルームの位置もよくわかります。
屋根には3つのドーマー窓が並び、その周囲にはミミズクの彫刻が3つ配置されています。館内で上映されていた紹介映像でも取り上げられていた装飾です。
屋根の高い位置にあるため、注意して見なければ気づきにくいものでした。
10月22日の訪問時、庭園のバラは4割ほどの開花とのことでした。まだ見頃には少し早く、バラのアーチも花が少ない状態でしたが、庭園にはところどころ花が咲いていました。
敷地内にある非公開の和風の離れ
庭園を歩いていると、洋館とは別に、和風の建物も見えました。
こちらは非公開の離れで、内部を見学することはできません。
建物の周囲には木々や庭があり、棚のような構造物も見られました。
洋館の庭園とは異なる落ち着いた景観が広がり、敷地内には和風の建物も残されていることがわかりました。


















🏛️ 東京の歴史ある洋館を訪ねる
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