東京発夫婦旅|大鳴門橋で味わう建築美と未成線の文化史

アートと文化

四国と淡路島を結ぶ大鳴門橋。橋桁内部を歩ける「渦の道」は、自然と建築が交差する特別な空間です。未成線として残る“四国新幹線”の痕跡や、海峡がつくる造形美を味わいながら、アートと文化の視点で巡った夫婦旅の記録です。


東京発ひとり旅|大鳴門橋で感じる建築美と未成線の文化史

夫の運転する車で訪れた大鳴門橋。鳴門海峡をまたぎ、四国(鳴門)と淡路島を結ぶ全長1629mの雄大な吊橋です。今回は、橋桁内部に設置された全長450mの遊歩道「渦の道」を歩きながら、建築と風景が織り成す“文化体験”を味わいました。

■ 橋の内部を歩く、特別な「海上ギャラリー」

高さ約45m、海の上をまっすぐ伸びる透明感のある遊歩道。足元のガラス床からは真下の海が見え、高所恐怖症でなくても足がすくむほどの迫力があります。まるで自然と建築のあいだに浮かんでいるような錯覚さえ覚えます。

しかし、この日は渦が控えめ。「前に見たときは、もっとぐるぐる巻いていたような…?」と首をかしげた瞬間、大潮の時間を確認していなかったことに気づきました。約40年ぶりの再訪、すっかり失念していました。

■ 自然の造形美 × 橋の構造美

ジリジリと肌が焼けるほどの暑さでしたが、海上を吹き抜ける風はひんやり。天然クーラーのようで心地よく、橋の巨大な構造に触れながら歩く時間は、まるで“海峡と対話するギャラリー”にいるようでした。

■ 大鳴門橋に隠された「未成線」という文化遺産

1985年の開通当初、大鳴門橋には「四国新幹線」が通る予定でした。しかし国内情勢などの理由で計画は立ち消えとなり、鉄道が通るはずだった空間は約15年後、観光名所「渦の道」として整備されることに。

鉄道スペースになるはずだった場所が正面から見えたり(写真2枚め)、入り口反対側には大きな穴がぽっかりと残っている(写真7枚め)のが目に入ります。これは“頓挫した計画の記憶”。まるで巨大建築の中に置き忘れられたアート作品のようで、浪漫と切なさが同居した、複雑な気持ちになる瞬間でした。

■ 未来に残る「活用する文化財」としての橋

新幹線が走らなかったからこそ、私たちは現在、この橋を歩いて渡るという貴重な体験ができます。歴史の選択によって生まれた“別の未来”。大鳴門橋は、ただの巨大インフラではなく、文化の時間軸が重なる「現代の文化遺産」と言えるのかもしれません。

■ 旅の締めくくりに、ほっこりする風景

帰りに立ち寄った「道の駅くるくるなると」は大盛況。賑やかな館内には鳴門金時のモニュメントが飾られ、思わず笑顔になる可愛らしさでした。海峡のダイナミックな景観から一転、ほっこりとしたローカル文化に触れ、ゆるやかに旅が締まりました。

自然、建築、歴史。大鳴門橋はそのすべてが重なり合う“アートと文化の旅”でした。

中央スペースは新幹線が走る予定だったところ
ぽっかり空いた穴も鉄道用

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