深沢小さな美術館へ|友永詔三作品と森のアートに出会う里山散策

森の中に佇む深沢小さな美術館の石造りの建物とzizi アートと文化

東京都あきる野市の森の中に佇む「深沢小さな美術館」。
情報誌でその写真を見たとき、童話の世界に出てくる家のような雰囲気に惹かれ、「歩いてでも行ってみたい」と思った場所でした。

武蔵五日市駅からは徒歩約40分。
里山の道を歩き、森の妖精「zizi」に出会いながらたどり着いた先には、造形作家・友永詔三氏が手がけた、温かみのある不思議な空間が広がっていました。

この記事では、駅から歩いた道のりやアクセスの様子、友永氏夫妻が自らつくり上げた建物、そして下駄を履いた魚など心に残った作品まで、実際に訪れて感じた魅力を紹介します。


深沢小さな美術館へ

2025年5月、東京都あきる野市の森の中にある「深沢小さな美術館」を訪れました。

この美術館を手がけたのは、造形作家・友永詔三氏。
NHKの人形劇「プリンプリン物語」の人形美術でも知られる方ですが、訪れるまで私は友永氏のことも、この番組のことも知りませんでした。

きっかけは、たまたま目にした情報誌の美術館特集。
森の中に佇む建物の写真を見て、「なんて素敵な場所なんだろう。ここへ行ってみたい」と心を惹かれました。

私には、森の中で「ヘンゼルとグレーテル」のお菓子の家を見つけたときのような、現実とは少し離れた童話の世界に見えたのです。

最寄りの武蔵五日市駅からは徒歩約40分。
それでも、この場所なら歩いてでも訪ねてみたいと思いました。

武蔵五日市駅から徒歩40分|里山の景色を楽しみながら歩く

JR五日市線の武蔵五日市駅南口から、深沢小さな美術館までは歩いて約40分。
道は舗装されていて、それほど細い道でもありませんが、美術館へ向かう行きは緩やかな登りが続きます。

この日は30度を超える暑さだったため、歩くのはなかなか大変でした。
それでも、駅から美術館までの道のりには、歩いて向かったからこそ楽しめたものがありました。

畑や民家のある里山を抜け、たっぷりの緑に囲まれた道を歩いていきます。
いわゆる昔ながらの農村風景というわけではありませんが、東京にいることを忘れそうになるほど緑が豊かで、空気までおいしく感じられるような場所でした。

車ならそのまま通り過ぎてしまいそうな景色を眺めながら、自分のペースで歩いていく。
暑さはありましたが、美術館へ向かう時間そのものも、この日の印象に残っています。

森の妖精「zizi」を探しながら歩く

美術館へ向かう道で楽しませてくれるのが、赤や黄色のとんがり帽子をかぶった森の妖精「zizi」です。

これも友永氏の作品。
道のところどころに立ち、「深沢小さな美術館」と書かれた案内板のそばでも、かわいらしい姿で道案内をしてくれます。

緑の中に次のziziを見つけると、ちょっとうれしい。
暑い日の40分の道のりは決して楽ではありませんでしたが、ziziを探しながら歩いていると、単に目的地へ向かうだけの時間ではなくなりました。

振り返ってみると、美術館に到着する前から少しずつ、友永氏のつくり出した世界へ案内されていたようにも感じます。

途中で出会った穴澤天神社

美術館へ向かう途中には、木々に囲まれた「穴澤天神社」もあります。

大きな観光スポットというわけではありませんが、緑の中に鳥居と社がひっそりと佇む姿が目に留まり、少し立ち寄ってみました。

車ならそのまま通り過ぎてしまいそうな景色に足を止められるのも、歩いて向かったからこそ。
美術館までの道のりそのものが、里山を楽しむ小さな散策になりました。

森の中に現れた、童話の世界のような美術館

緑の中を歩いた先に、深沢小さな美術館が現れます。

情報誌の写真を見て以来、ずっと訪れてみたかった場所。
実際に目の前にすると、森の木々に包まれた建物は、やはり童話の中に出てくる家のようでした。

暑さで汗だくになりながら40分歩いてきましたが、この建物を見た瞬間、「ここまで歩いてきてよかった」と思ったのを覚えています。

到着すると、迎えてくださった奥様が暑い中を歩いてきたことを労ってくださいました。
そのとき、「外国の方はみんな歩いて来るんですよ」と話されていたことも印象に残っています。

築200年以上の古民家を自分たちの手で改築

さらに驚いたのは、この独特な美術館が、築200年以上の古民家をもとに友永氏夫妻が自分たちの手でつくり上げてきたものだということでした。

石造りの壁も夫妻で石を積み、窓や扉にも手仕事が感じられます。
「DIY」という言葉から私が想像していたものをはるかに超えていて、造形作家が建物そのものを手がけると、こんな世界が生まれるのかと驚きました。

石や木など自然の素材が使われ、ひとつとして同じ形ではない窓や扉。
人の手で少しずつつくられてきたからでしょうか。これほど個性的な空間なのに不思議と落ち着きがあり、とても温かみを感じました。

この日は友永氏にはお会いできませんでしたが、迎えてくださった奥様の柔らかな物腰と笑顔も印象的でした。
ゆっくり作品を眺めていても急かされるような感じがなく、つい長居したくなる居心地のよさがありました。

窓も扉も、そこから見える景色まで作品のよう

深沢小さな美術館では、展示されている作品だけを見て歩くのではなく、建物そのものにも目を奪われます。

曲線を描く窓や木の扉、石積みの壁、照明。
どこを切り取っても一枚の絵のようで、建物の中に作品が展示されているというより、空間全体がひとつの作品になっているように感じました。

特に印象的だったのが、窓から見える景色です。

建物のすぐそばには池があり、赤や白の鯉がゆったりと泳いでいます。
窓を開けると、その向こうに森の緑と池が広がり、鮮やかな鯉の色まで風景の一部に溶け込んでいました。

窓が額縁になり、その向こうの自然まで一枚の絵になる。
美術館の中にいながら森と切り離されることがなく、そこに自分まで入り込んでいるような感覚がありました。

友永詔三氏の作品|胸のある木と、下駄を履いた魚

館内には、友永氏ならではの想像力にあふれた作品が並んでいます。

大きなキノコのようにも見える木には、よく見ると胸があります。
そして魚には人間のような足があり、なんと下駄まで履いています。

発想だけを聞けばかなり奇抜なのに、実際の作品には不思議ととげとげしさがありません。
どこか愛嬌があり、眺めていると思わず頬がゆるむ。そんな温かなユーモアを感じました。

作品のそばには、友永氏自身による説明も添えられています。

足のある魚が生まれたきっかけは、友永氏が子どものころに抱いた「魚は歩かないのかな」という素朴な疑問だったそうです。
子どものころの自由な発想が、大人になって本当に作品として形になっていました。

「子供の頃に見た夢を見続けられるかどうか」

足のある魚のそばに添えられていた文章も、強く印象に残っています。

そこには、人は誰でもものをつくる力を持っているけれど、さまざまな事情や生活のなかで、それを手放さなければならないこともある、という趣旨のことが書かれていました。

そして最後にあったのが、

「子供の頃に見た夢を見続けられるかどうかです。」

下駄を履いた魚を見て、最初はその自由な発想に笑みがこぼれました。
けれど、その横にある言葉を読むと、今度は少し立ち止まってしまいました。

子どものころなら自然に思い描けたことを、大人になった今も持ち続けているだろうか。
そんなことを考えさせられ、妙に胸に残った言葉でした。

作品を見るだけではない、友永詔三氏の世界へ

深沢小さな美術館を訪れるまで、私は友永詔三氏のことを知りませんでした。

ただ情報誌で一枚の写真を見て、「この場所へ行ってみたい」と思っただけでした。

実際に訪れてみると、道中ではziziに出会い、森の中には童話の家のような建物が現れ、その中には胸のある木や下駄を履いた魚。
手作りの窓の向こうには緑と池が広がり、泳ぐ鯉まで作品の一部のように見えます。

美術館で作品を鑑賞したというより、友永氏がつくり上げた世界の中へ自分まで入り込んだような時間でした。

暑い中を歩いてきた疲れもありましたが、それ以上に「ここまで来てよかった」と思えた場所でした。

深沢小さな美術館へのアクセス

深沢小さな美術館は、東京都あきる野市深沢にあります。
JR武蔵五日市駅(南口)から徒歩約40分です。

道は舗装されていて急な坂ではありませんが、美術館へ向かう行きは緩やかな登りが続きます。
この日は30度を超える暑さだったため、徒歩40分は正直なところなかなか大変でした。

私が訪れたときは、途中から飲食店はもちろん、自動販売機も見かけませんでした。
暑い時期に歩いて向かう場合は、武蔵五日市駅周辺で飲み物を用意しておいたほうが安心です。

途中では、美術館へ向かうと思われるタクシーにも何台か追い越されました。
その後、美術館方面から戻ってくる空車のタクシーを見て、「私もここから乗せてほしい……」と思ったのも事実です。

一方、帰りは下りになるため、行きよりずっと楽に感じました。

【所在地】
東京都あきる野市深沢492

【アクセス】
JR武蔵五日市駅(南口)より徒歩約40分、またはタクシー利用

【休館日など】
水・木曜日休館
12月〜3月は冬期休館

※以前あった喫茶営業は現在は行われていません。営業日・開館時間などは変更される場合があるため、訪問前に最新情報をご確認ください。

深沢小さな美術館へ向かう道に立つ森の妖精zizi
深沢小さな美術館へ向かう途中にある穴澤天神社
石積みの壁と青緑色の窓のそばに立つ森の妖精zizi
石積みの壁に囲まれた深沢小さな美術館の手作りの木の扉
曲線のある木の扉と石積みの壁が印象的な美術館の館内
深沢小さな美術館の窓から見える緑の森と鯉が泳ぐ池
石造りの建物の窓辺に広がる池と泳ぐ色鮮やかな鯉
友永詔三氏による胸のある木と足のついた魚の作品
下駄を履いた足のある魚など友永詔三氏のユーモラスな作品
手作りの小窓と一体になった友永詔三氏の人物造形作品
友永詔三氏の人形作品と作品づくりへの思いを伝える展示

🌿 武蔵五日市・檜原村で出会った風景

深沢小さな美術館へ向かう里山の道のように、このエリアには自然や文化にふれながら歩きたくなる場所が点在しています。
滝や寺院、山里の桜など、武蔵五日市から足を延ばして訪ねた場所もあわせてどうぞ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました