子どもの頃、駅で何度も目にしていた「直江津行き」の行き先。行ったことはないのに、ずっと心の中に残っていたその街を、ふと思い立って訪れた11月末のひとり旅。冬の気配が近づく日本海は思いがけず快晴で、海の幸に舌鼓を打ち、文学や歴史の痕跡に触れながら歩いた上越の時間は、とても穏やかで贅沢なものでした。時代の移ろいを感じつつも、変わらずそこにある景色と味に癒された、心にしみる “東京発・グルメひとり旅” の記録です。
子どもの頃から心に残っていた「直江津」へ
2025年11月29日。ふと、以前から気になっていた直江津を訪れようと思い立ちました。
子どもの頃、駅で「糸魚川行き」「直江津行き」の行き先を何度も見かけた記憶があり、行ったことはないのにずっと心に残っていた地名。その懐かしさに導かれるように、東京から上越妙高方面へ向かいました。
まずは地物が並ぶ海鮮ランチへ
直江津駅に到着し、最初に向かったのは気になっていた海鮮のお店。
街中では人をほとんど見かけなかったのに、開店からわずか15分ですでに店内は満席に近い状態。期待が高まります。
カニ漁が解禁されたとのことで「一人分のカニもお出しできますよ」とおすすめいただき、海鮮丼とカニを注文。
カニは丁寧に食べやすくカットされており、どれも新鮮で美味しい。海鮮丼には使用された地物の魚を書いた手書きメモが添えられており、心遣いも嬉しいものでした。
とてもリーズナブルで、旅のスタートから至福の時間を過ごしました。
船見公園で出会う文学の気配
食後は、二段坂を下って海岸へ。日本海の冬前とは思えない晴天で、陽の光に海がきらめいていました。
船見公園には、小川未明の「赤い蝋燭と人魚」をモチーフにした人魚像があり、文学の香りを感じるひとときに。
さらに園内には、与謝野晶子が大正13年に訪れた際の詩
「落日が枕にしたる横雲の なまめかしけれ直江津の海」
が刻まれた句碑もあり、直江津の海が古くから人々を魅了してきたことを実感しました。
上越市最古の擬洋風建築「ライオン像のある館」へ
次に向かったのは、旧直江津銀行として建てられた「ライオン像のある館」。
大正9年に現在地へ移築され、のちに海運業を営む高橋達太が回漕店の社屋として使用していた建物です。
外壁の煉瓦塀は、かつて火災が多かった直江津の歴史を物語り、内部の調度品はどれも立派で財力を感じさせるもの。特にコート掛けひとつでも存在感があり、当時の繁栄ぶりをしみじみと感じました。
かつては北前船の寄港地として賑わい、駅から海へまっすぐ商店街が続くほど華やかな街だったと伺い、今との対比に少し胸が締めつけられる思いもありました。
文学碑が残る川辺を歩きながら直江津を後に
歩いている途中、佐渡汽船の看板が目に入り、ここから佐渡へ渡る航路があることにも驚きました。
関川河口には安寿と厨子王供養塔、森鷗外文学碑が残され、さらに直江津ゆかりの林芙美子の碑もあります。
穏やかな海と文学の影が重なるような、不思議と落ち着く散策でした。
高田で歴史ある街歩きを楽しむ
直江津を後にし、次に向かったのは高田。雪国らしい町並みを歩きながら、気になるスポットを訪れました。
瞽女ミュージアム高田
「瞽女(ごぜ)」について初めて知ることが多く、とても興味深い展示に時間を忘れて見入ってしまいました。
日本最古の映画館・高田世界館
この日は上映中のため中の見学ができず、外観のみ。それでも歴史ある佇まいに心惹かれました。
高田師団長官舎
明治期の和洋折衷建築で、民間レストランとして活用されている建物。入館無料で、趣深い空間が静かに迎えてくれます。
400年続く老舗・高橋孫左衛門商店
北国街道沿いで400年続く飴屋さん。水飴と寒天でつくられる「翁飴」は、高田城主の参勤交代の土産にも使われていたとのこと。歴史の深さを感じながら買い物を楽しみました。
創業100年の小竹製菓へ
最後は南高田方面へ歩き、小竹製菓さんへ。笹団子パンや、独自製法のパンに秘伝のバタークリームを挟んだ「サンドパン」を購入。素朴でどこか懐かしい味にほっと癒されました。
直江津と高田を歩いて感じたこと
子どもの頃から心に残っていた直江津。街の姿は時代とともに変わっていましたが、綺麗な海と美味しい地物の味に気分がほぐれ、歩くごとに心が晴れるような旅になりました。
一方で、賑わいの変化や建物の歴史に触れ、時代が移ろう残酷さも感じつつ…。それでも、春や違う季節にまた訪れたいと思える魅力が上越にはありました。
高田、春日山、そして直江津。次は季節を変えて歩いてみたい──そう思いながら上越妙高駅から帰京しました。






















































































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