上越線を走る黒い車体から立ち上る蒸気と汽笛の音に誘われ、人生で初めてSLに乗車しました。
窓を開けて感じる風や煙の匂い、トンネル前のアナウンス――そのすべてが懐かしく、まるで時間を遡るような体験に。
東京から日帰りで出会えた、ノスタルジックな列車旅の記録です。
高崎駅で偶然出会った「SLぐんま」
2023年8月。
たんばらラベンダーパークを訪れた帰り道、高崎駅で快速電車を待っていると、思いがけない光景が目に飛び込んできました。
ホームに停まっていたのは、まさかのSL(蒸気機関車)。黒い車体から白い蒸気が立ち上り、周囲の空気まで震えるような存在感を放っています。
「SLぐんま」と呼ばれるこの列車は、上越線の高崎駅〜水上駅間を走る臨時快速列車。
運行日は限られており、偶然出会える機会はそう多くありません。
迷う間もなく、これは乗るしかない——そう思い、人生で初めて蒸気機関車に乗車することになりました。
初めてのSL体験。目の前に広がる黒い鉄の迫力
これまでSLについては、親から昔の話を聞いたことがあるだけ。
実際に自分が乗車するのは今回が初めてです。
間近で見る黒光りする車体は想像以上の迫力。
白い蒸気がゆっくりと立ち上る様子は、生き物の呼吸のようにも感じられました。
小さな窓の奥には機関士さんの姿。
視界は驚くほど限られているように見え、こんな環境で列車を動かしていることに驚かされます。
ホームにはカメラを構える人が大勢いて、この列車が多くの人に愛されていることが伝わってきました。
ふと運転席を見ると、機関士さんの顔は煤で真っ黒になり、汗でびっしょり。
真夏の炎天下の中で蒸気機関車を動かす仕事の過酷さを、ほんの少しだけ垣間見た気がしました。
トンネル前で窓を閉める——時代を越えたアナウンス
列車が動き出すと、規則正しいリズムの音とともに車窓の景色がゆっくりと流れていきます。
窓を開けると、風とともに煙の匂いがかすかに漂い、五感で旅をしていることを実感しました。
しばらくすると、車内にアナウンスが流れます。
「まもなくトンネルに入ります。窓をお閉めください」
親から聞いたことのある言葉が、今まさに自分の乗っている列車で流れている。
乗客たちが一斉に窓を閉めるその瞬間、現代にいながらも、かつての鉄道旅の風景の中に入り込んだような不思議な感覚になりました。
レトロな客車の内装、汽笛の音、そしてゆっくりと進む列車の揺れ。
すべてが、時間を巻き戻したような体験でした。
今も息づくSLの魅力と、その継承
便利で速い列車が当たり前になった今、蒸気機関車は決して効率的な乗り物ではありません。
それでも、こうしてSLを走らせ続けているのは、多くの人の技術と情熱があるからこそだと思います。
整備をする人、運行を支える人、そしてそれを楽しみに訪れる人。
そのすべてが、この列車を未来へとつないでいるのだと感じました。
偶然の出会いから始まった、短い蒸気機関車の旅。
けれどもその時間は、遠い時代へと心を運んでくれる、特別なひとときでした。
東京から日帰りで出会える、ノスタルジックな鉄道体験。
思いがけず心に残る、東京発のひとり旅となりました。








たんばらラベンダーパークを訪れた時の記事はこちら ↓



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