国会議事堂見学|参議院と衆議院を1日で巡ってわかった違い

国会議事堂の参議院本会議場 大人の社会科見学

2026年8月、再び国会議事堂へ。
前回は団体ツアーで衆議院を見学しましたが、今回は個人で参加し、ガイドさんの説明を聞きながら改めて衆議院を見学するつもりでした。

ところが、入口にあった「FULLY BOOKED」の文字を見て、なぜか参議院へ向かうことに。
そこで初めて知った参議院ならではの仕組みや見どころが気になり、結局そのあと衆議院まで見学して、1日のうちに両方を巡ることになりました。

同じ国会議事堂の中にあり、よく似ていると思っていた参議院と衆議院。
続けて見学してみると、本会議場の仕組みや見えるものには意外な違いがありました。


衆議院を再訪するはずが、なぜか参議院へ

国会議事堂を訪れるのは、今回が2回目です。
前回は2024年12月、ツアーで衆議院を見学しました。

そのとき、国会議事堂は個人でも見学できることを知りました。
前回は団体での参加だったこともあり、ガイドさんの説明を十分に聞けていなかったところもあります。

そこで今回は、個人で参加して改めてガイドさんの説明を聞きながら、衆議院を見学することにしました。

事前に確認すると予約は不要。午前中は混雑するため、午後の見学がおすすめとも案内されていました。

ところが、国会議事堂に到着し、衆議院の見学受付へ行くと、入口に大きく「FULLY BOOKED」の文字。

「えっ、予約不要だったはずなのに?」
せっかくここまで来たのに見学できないのかと思い、仕方なく参議院の見学受付へ向かいました。

こちらまで「FULLY BOOKED」だったらどうしようと思いながら到着すると、係の方から「参議院をご希望ですか? 衆議院ですか?」と聞かれました。

「衆議院は予約でいっぱいだったので、こちらへ来ました」と答えると、何とも不思議そうな表情。
入口にあった「FULLY BOOKED」の貼り紙のことを伝えると、そこで私の勘違いが判明しました。

あれは英語で行われるツアーが予約でいっぱいという案内で、通常の衆議院見学が満員という意味ではなかったのです。

「衆議院にされますか?」と少し笑いながら聞かれましたが、ここまで来たのも何かの縁。
「参議院でお願いします」と答えて、そのまま受付を済ませました。

こうして衆議院を再訪するはずだったこの日、思いがけず初めて参議院を見学することになりました。

参議院の見学前から、知らなかったものが次々と

受付と手荷物検査を済ませると、見学開始までは展示スペースで待つことになりました。

ここには、現在の参議院で使われているものから、かつて使われていたものまで、さまざまな展示が並んでいます。
まず気になったのが、参議院の議席を再現した展示です。

机には氏名標があり、その横には採決に使う押しボタンも備えられていました。
普段ニュースで見る本会議場の議席に、こんな仕組みがあることを初めて知りました。

その近くには、かつて貴族院の本会議で無名投票を行う際に使われていた投票器もありました。

白球と黒球を使い、賛成と反対に分けて投票する仕組み。
投票後に中を開けると、内部の目盛りによって票数が分かるようになっていたそうです。

さらに目を引いたのが、明治時代の第二次仮議事堂で使われていた御椅子です。
貴族院議場の玉座に置かれ、開院式の際には天皇陛下がお座りになったものだそうです。

重厚な展示が続くなか、思わず足を止めたのが、レゴで作られた国会議事堂でした。
参議院創設70周年を記念して2017年に制作されたもので、その後、参議院へ寄贈されたそうです。

そんな展示を見ているうちに時間となり、いよいよ参議院の見学が始まります。

参議院本会議場へ

見学が始まり、まず向かったのは参議院本会議場です。
ニュースでは何度も目にしている場所ですが、実際に傍聴席から見下ろすと、半円形に議席が並ぶ様子までよく見渡せます。

先ほど展示スペースで見た氏名標や押しボタンも、それぞれの議席に備えられていました。
氏名標を立てるとセンサーが反応し、出席していることが確認できる仕組みになっているそうです。

ここで、ふと気になりました。
前回見学した衆議院にも、こんな押しボタンがあっただろうか。

衆議院の採決といえば、テレビで議員が立ち上がったり、演壇へ向かって投票したりする光景を見た記憶があります。
このときはまだ、「前回の見学で気づかなかっただけかな」くらいに思っていました。

参議院本会議場には、開会式の際に天皇陛下がお座りになる御席があります。
普段は議長席との間がカーテンで仕切られていて、このカーテンが開かれるのは、国会の開会式が行われる日だけだそうです。

さらに傍聴席には、天皇皇后両陛下がお座りになる御傍聴席も設けられていました。

そして、もうひとつ印象に残ったのが天井のステンドグラスです。

国会議事堂は、建築に使うものをできる限り国産品でまかなう方針で造られました。
それでも当時の日本では用意できず、外国製となったものが3つあったそうです。そのひとつが、このステンドグラスでした。

当時の日本でも色の濃いガラスは作れたものの、ここで使われているような淡い色合いのガラスを作る技術はまだなく、イギリスから輸入されたものだとガイドさんから教えていただきました。

残る2つは、館内に設置された郵便投函筒と、ひとつの鍵で複数の扉を開けられる鍵の仕組みです。
郵便投函筒は特許の関係からアメリカ製のものが使われ、鍵の仕組みも当時の日本にはその技術がなく、外国製のものが採用されたそうです。

郵便投函筒は移動中に実物を見ることができましたが、残念ながら撮影することはできませんでした。

「できる限り国産で造られた」と聞くだけでは気づかなかったことですが、なぜ外国製のものが使われたのかまで知ると、頭上のステンドグラスの見え方まで少し変わってきます。

国会議事堂で最も華麗な御休憩所

本会議場を出て向かったのは、天皇陛下の御休憩所です。
国会の開会式の日、天皇陛下は国会議事堂に到着すると、まずこの御休憩所に入られるそうです。

その手前の広間から、すでに見どころがありました。
入口の上部に使われている大理石は、継ぎ合わせたものではなく、一つの石をくり抜くように加工して造られたものだと教えていただきました。

さらに頭上を見上げると、ここにも淡い色合いのステンドグラスがあります。
先ほど参議院本会議場で見たものと同じく、当時の日本では作ることができず、イギリスから輸入されたものです。

御休憩所は、国会議事堂の中でも特に力を注いで造られた場所。
ガイドさんによると、当時の建築や工芸の粋を集め、費用の制約を設けずに最高級の材料や技術が用いられたといいます。

床や壁、天井、照明、金具に至るまで、それぞれに日本の伝統的な技術が使われています。
細部まで目を向けると、ほかの部屋とは明らかに違う華やかさがありました。

なかでも印象に残ったのが、大きな鏡です。
一枚の大きな鏡に見えますが、実際には大きさの異なる3枚の鏡で構成されています。

鏡の間を仕切る柱には、平安時代の巻柱を模した乾漆の技法が使われ、上部には菊花紋章を中心に鳳凰を配した錦の刺繍も施されていました。

御休憩所の近くには、皇族の方々が使用される皇族室もあります。

華やかな内装とはまったく別のところで、もうひとつ足を止めたものがありました。
廊下にある、一見すると何でもない空気口です。

現在のような冷房設備がなかった時代、国会議事堂の地下には氷を置く「氷室」がありました。
中庭の池に設けられた吸気口から空気を取り込み、氷室で冷やした空気を館内へ送り、その冷気がこうした空気口から出る仕組みになっていたそうです。

豪華な装飾には自然と目が向きますが、何気なく通り過ぎそうな場所にも、建物が造られた当時の工夫が残っていました。

館内を歩いていると、廊下に敷かれた赤絨毯についても興味深い話を聞きました。
国会議事堂内の赤絨毯は、すべてつなげると4キロを超える長さになるそうです。

しかも1メートルあたり15,000〜20,000円ほどするため、一度にすべてを交換することはできず、少しずつ張り替えているのだとか。
思わず金額を聞き直してしまいました。

法隆寺の五重塔が入るという中央広間

続いて向かったのは、参議院と衆議院をつなぐ中央広間です。

中央塔の真下にある吹き抜けは、2階から6階まで続き、高さは32.62メートル。
法隆寺の五重塔がすっぽり入るほどの高さだと聞くと、その大きさがぐっと想像しやすくなりました。

壁の高い位置には、春・夏・秋・冬、日本の四季を描いた油絵があります。
春は吉野の千本桜、夏は十和田湖、秋は奥日光、冬は日本アルプスをイメージしたもので、ガイドさんによると、描いたのは当時の画学生だったそうです。

ただし、実際にそれぞれの場所を訪れて描いたものではなく、その風景を想像して描いたものなのだとか。
もともとは陶器のモザイクで作る計画でしたが、時間と費用がかかり過ぎるため、油絵に変更されたそうです。

中央広間には4つの台座があり、そのうち3つには伊藤博文、大隈重信、板垣退助の銅像が立っています。
ただし、参議院側から見えるのはそのうち2人。残る1人の銅像と空の台座は、反対の衆議院側から見ることになります。

いただいた冊子によると、4人目を誰にするか決められなかったため、将来に持ち越されたといわれているそうです。
また、この空いた台座には「政治に完成はない、未完の象徴」という意味もあるといわれています。

今回のガイドさんからは、将来ここに立つような政治家が現れることを望む、という話も聞きました。

中央広間の先にあるのが、国会議事堂の正面に位置する中央玄関です。
普段は閉ざされていて、選挙後に議員が初めて登院するときや、天皇陛下をお迎えするとき、外国の賓客が訪れたときなど、限られた機会に使用されます。

もうひとつ、ガイドさんの説明を聞かなければ気づかなかったのが、中央広間の照明です。

照明は上からではなく、下から上へ向けて光が当たるようになっています。
これは、天皇陛下がお通りになる際にできる影を人が踏むことのないよう考えられたものだそうです。

そして見上げた中央塔には、この広間よりさらに上にも空間があります。
上部にはダンスホールと呼ばれる場所があり、その先には螺旋階段、さらに展望室まであると聞きました。

もちろん、一般の見学でそこまで上がることはできませんが、中央広間でそんな話を聞いてしまうと、今まで何気なく見ていた中央塔まで気になってきます。

参議院を出たのに、やっぱり衆議院が気になる

参議院の見学を終えて外へ出ました。
当初の予定とは違ったものの、これだけ見学できれば十分。このまま帰ってもよかったはずです。

ところが、どうにも衆議院が気になります。

前回見学したのは衆議院でしたし、そもそもこの日も、もう一度衆議院を見学するつもりで国会議事堂へ来ています。
思いがけず参議院をたっぷり見学したというのに、当初の目的だった衆議院もやはりもう一度見ておきたいという、妙なこだわりが残っていました。

それに、参議院を見学したことで新たな疑問も生まれていました。
議席にあった押しボタン式の投票装置です。

前回の衆議院見学では、そんなものを見た記憶がありません。
テレビで見る採決の光景を思い返しても、衆議院では議員が立ち上がったり、演壇へ向かって投票したりしているような……。

もしかすると、衆議院と参議院では本当に違うのかもしれません。

そんなことを考えているうちに、結局そのまま衆議院へ向かうことにしました。

同じ国会議事堂なのに、やっぱり違った

今度は衆議院の見学へ。
この日2度目となる国会議事堂の中へ入ります。

参議院では個人の見学者だけでしたが、衆議院では私たち個人参加の見学者の後ろを、団体ツアーの参加者も歩いていました。
前回は私も団体ツアーで参加していたため、歩きながらの説明は聞こえていなかったものもあったのかもしれません。

そして歩き始めて気づいたのが、足元の感触です。
参議院の見学で赤絨毯の話を聞きましたが、衆議院側はちょうど張り替えを終えたところだったそうで、歩いてみると確かにふかふかでした。

見学は御休憩所前の広間から始まりました。
先ほど参議院の見学でも訪れた場所へ、今度は反対側の廊下から入っていきます。

中央広間も同じ空間ですが、立つ場所が変われば見えるものも変わります。
参議院側では見えなかったもう1人の銅像と空の台座、さらに別の四季の絵が見え、同じ中央広間を反対側から眺めていることがよく分かりました。

そして、前回も見学した衆議院本会議場へ。

ここで確かめたかったのが、参議院の議席にあった投票装置です。
改めて見ると、やはり衆議院の議席には同じものはありません。

衆議院の本会議では、賛成する議員が立ち上がる起立採決や、白票・青票を使う記名投票などが行われます。
一方、参議院では押しボタン式投票が通常の採決方法として使われています。

同じ国会議事堂の中にあり、見た目もよく似た二つの本会議場。
それでも、実際の仕組みにはこんな違いがありました。

参議院を見学しなければ、おそらく気にすることもなかった違いです。
「前回の見学で気づかなかっただけなのかな」と思っていた疑問も、両方を続けて見たことでようやくすっきりしました。

本会議場でもうひとつ違っていたのが、天皇陛下がお座りになる御席です。
先ほど参議院本会議場で見たこの御席は、衆議院本会議場にはありません。

衆議院で議長席の上部に設けられているのは、天皇皇后両陛下の御傍聴席です。
よく似ていると思っていた二つの本会議場ですが、続けて見学してみると、こうした違いにも気づくことができました。

ちなみに、両方を見学して「どちらかひとつだけ」と聞かれたら、私は参議院を選びます。
本会議場では天皇陛下の御席を見ることができ、押しボタン式の採決や氏名標による出席確認など、衆議院とは異なる仕組みも知ることができました。見学前の展示も充実していて、思いがけず訪れた参議院でしたが、見どころは参議院のほうが多く感じました。

最後に中央塔を見上げて

こうして、思いがけず参議院と衆議院の両方を見学することになったこの日。
すべての見学を終えて外へ出ると、改めて国会議事堂の中央塔を見上げました。

そこで思い出したのが、中央広間でガイドさんから聞いた、中央塔のさらに上にある「ダンスホール」や螺旋階段、その先の展望室のことです。

もちろん、一般の見学では立ち入ることのできない場所です。
それでも一度その存在を知ってしまうと、外から見える中央塔のどのあたりにあるのだろうと、つい目で追ってしまいます。

衆議院をもう一度見学するだけのつもりで訪れた国会議事堂。
入口の「FULLY BOOKED」を勘違いしたことから予定になかった参議院へ行き、最後には衆議院まで見学して、気づけば前回とはまったく違う国会議事堂の見え方になっていました。

正門側から見た国会議事堂
国会議事堂参議院の見学者向け展示スペース
参議院の議席を再現した氏名標と押しボタン式投票装置
氏名標の横には採決に使う押しボタン。氏名標を立てると出席確認のセンサーも反応します。
貴族院の本会議で使われていた無名投票器
貴族院で使われていた無名投票器。白球と黒球を使って賛否を投票しました。
第二次仮議事堂の貴族院議場で使われた御椅子
第二次仮議事堂の貴族院議場で、開院式の際に天皇陛下がお座りになった御椅子。
レゴブロックで作られた国会議事堂
傍聴席から見た国会議事堂の参議院本会議場
参議院本会議場の議長席と天皇陛下の御席
議長席の後方には、国会の開会式で天皇陛下がお座りになる御席があります。
参議院本会議場の天皇皇后両陛下の御傍聴席
参議院本会議場のイギリス製ステンドグラス
参議院本会議場のイギリス製ステンドグラス
天皇陛下の御休憩所前にある一つの石から造られた大理石の装飾
継ぎ合わせではなく、一つの石をくり抜くように加工して造られた入口上部の大理石。
天皇陛下の御休憩所前にあるステンドグラス
御休憩所前の広間にも、イギリスから輸入された淡い色合いのステンドグラスが使われています。
国会議事堂の天皇陛下御休憩所前の広間から見た光景
国会議事堂の天皇陛下御休憩所
大きな鏡は一枚に見えますが、実際には大きさの異なる3枚で構成されています。
国会議事堂で皇族の方々が使用する皇族室
地下の氷室で冷やした空気を送っていた国会議事堂の空気口
地下の氷室で冷やした空気は、こうした空気口から館内へ送られていました。
参議院側から見た国会議事堂の中央広間
参議院側から見た中央広間。こちらからは2人の銅像が見えました。
国会議事堂の中央広間から見た中央玄関
高さ32.62メートルの国会議事堂中央広間の吹き抜け
中央広間の角をまたいで描かれた吉野の千本桜をイメージした春の油絵
吉野の千本桜をイメージした春の油絵。中央広間の角をまたぐように描かれています。
衆議院側の廊下から見た天皇陛下御休憩所前の広間
衆議院側から見た国会議事堂の中央広間
衆議院側から見ると、もう1人の銅像と空の台座が見えます。
傍聴席から見た国会議事堂の衆議院本会議場
国会議事堂の中央塔

🏛 東京で楽しむ大人の社会科見学

東京には、普段はなかなか入る機会のない施設を見学できる場所があります。
政治や金融、印刷など、日本の仕組みを支える場所を訪ねた「大人の社会科見学」の記録も、あわせてどうぞ。

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