2026年7月末。 2年前、四日市での工場見学の帰りに少しだけ立ち寄ったノリタケの森。 その時は時間が限られていたため、赤レンガの建物を眺め、TSUTAYA BOOKSTORE則武新町の巨大本棚を見ただけで帰ることになりました。
「今度はもっとゆっくり歩いてみたい。」 そんな思いがずっと残っていて、今回ようやく再訪することができました。
今回は開館前の静かな園内を歩き、窯壁や煙突モニュメント、赤レンガの建物を見学。 さらにウェルカムセンターとクラフトセンター・ミュージアムを巡り、美しい食器だけでなく、ノリタケが歩んできた歴史や、時代とともに広がってきたものづくりの世界に触れました。
もう一度訪れたかったノリタケの森
前回と同じく、訪れたのは7月末。 暑さは覚悟していましたが、今回は開館前に到着し、朝の静かなノリタケの森を散策してから、TSUTAYA BOOKSTORE則武新町、ウェルカムセンター、クラフトセンター・ミュージアムを巡ることにしました。
朝の静かなノリタケの森を歩く
名古屋駅から、なごや観光ルートバス「メーグル」に乗り、「ノリタケの森西」バス停で下車します。 夏休み中の平日ということもあり車内は多くの人で賑わっていましたが、そのほとんどがトヨタ産業技術記念館で降車。開館前にもかかわらず長い列ができていて、人気の高さを実感しました。
その次の「ノリタケの森西」で降り、案内板に沿って開店前のイオンモール内を通り抜けると、目の前に広々とした芝生が広がります。 左手にはビオトープ、そしてその奥には赤褐色の窯壁が続いていました。
その景色を見た瞬間、以前歩いた瀬戸市の「窯垣の小径」を思い出しました。 一見似ているようにも見えますが、瀬戸の窯垣が古い窯道具を積み上げて造られているのに対し、ノリタケの森の窯壁は、創業当時の工場で基礎に使われていた古煉瓦塊を積み上げて造られています。 壁面には「ノリタケの森基金」に賛同した方々の名前が焼き付けられた陶板が整然と並び、この場所の歴史を未来へ受け継ぐモニュメントのようにも感じられました。
窯壁に沿って歩いていると、蔦に覆われた煙突のモニュメントが姿を現します。 根元には、窯から出た煙を煙突へ送るための煙道も保存されていて、赤レンガの遺構と緑が美しく調和していました。
ここでようやく、「この場所はもともと工場だったんだ」と実感しました。 煙突だけを見るのではなく、窯壁や煙道と一緒に眺めることで、かつてここで多くの製品が生み出されていた風景が少しだけ想像できたような気がします。
煙突のモニュメントはイオン側まで点在し、広い芝生では親子連れがトンボを追いかける姿も見かけました。 蔦に覆われた深い緑の煙突、赤褐色の窯壁、芝生の鮮やかな緑、そして夏空の青。 その色のコントラストがとても美しく、暑さを忘れて園内を何度も歩いてしまったほどです。
続いて赤レンガの建物が並ぶエリアへ向かいます。 工場跡ならではの重厚な佇まいで、近づいて見るとレンガ一つひとつの焼き色や質感の違いまでよく分かります。 歴史を感じさせる窓枠のデザインや、足元にさりげなく使われている刻印入りのレンガなど、細かな部分にも目が留まりました。
開館前だったこともあり人影は少なく、ゆっくり建物を眺めながら写真を撮ることができました。 レンガ造りの建物と木々の緑が調和した園内は開放感があり、暑さの中でも歩いているだけで心が落ち着くような空間でした。
巨大本棚が印象的なTSUTAYA BOOKSTORE則武新町
時計を見ると、ちょうど10時。 開店と同時に、今回も楽しみにしていたTSUTAYA BOOKSTORE則武新町へ向かいました。
館内に入ると、ひんやりとした空気が心地よく、階段へ続く巨大本棚が目の前に現れます。 天井まで届く本棚は、前回見た時と変わらず圧巻の存在感でした。 開店直後だったため人も少なく、静かな空間の中でゆっくり見上げることができました。
前回は「壁一面が本棚だ!」という印象だけで終わってしまいましたが、今回はふと違和感を覚えます。 「あれ? 天井が……。」 よく見ると、天井は鏡張りになっていて、本棚がさらに高く続いているように見える仕掛けになっていました。 前回はまったく気づかず、その壮大さにただ驚いていた自分を思い出し、思わず苦笑いしてしまいました。
本棚と鏡がつくり出す美しいリフレクションは、まるで別世界のような空間です。 スターバックスも併設されているので、本を眺めながらゆったりとした時間を過ごすことができます。
ウェルカムセンターで知ったノリタケの歩み
TSUTAYA BOOKSTORE則武新町を後にして、楽しみにしていたウェルカムセンターへ向かいました。 館内ではまず映像を視聴し、その後は展示パネルを見ながらノリタケの歴史をたどります。
展示の前には大きなお皿が置かれ、手をかざすと映像や解説が流れる仕掛けになっていました。 ガイドがいなくても、自分のペースで歴史やものづくりについて学ぶことができます。
ここへ来るまでは、ノリタケといえば「世界中で愛される陶磁器メーカー」というイメージしかありませんでした。社名も、この地域の地名から付けられたという程度のことしか知らず、その歴史や背景について考えたことはほとんどありませんでした。
ところが展示を見て、その印象は大きく変わりました。 ノリタケだけでなく、TOTO、日本特殊陶業、NGKなど、日本を代表する企業が、森村市左衛門の「一業一社」の精神から生まれていたことを初めて知ったのです。 しかも、それぞれが現在も世界の第一線で活躍する企業ばかり。 思わず「なんてすごい会社なんだろう」と心の中で何度も驚いてしまいました。
愛知県にはトヨタをはじめ世界に誇る企業が数多くありますが、その歴史の一端がここノリタケにもあったことを知り、この場所を見る目が一気に変わりました。
さらに驚いたのは、現在のノリタケの事業です。 美しい洋食器の会社という印象が強かったのですが、現在は工業機材事業が売上の大きな柱となり、食器事業は全事業の中では最も小さな規模になっているそうです。 時代に合わせて培ってきた技術を発展させ、新しい分野へ展開しながら歩み続けてきた企業であることを知り、その歴史にますます興味が湧きました。
クラフトセンター・ミュージアムで出会った美しいデザイン
ウェルカムセンターを見学し終える頃には、「もっとノリタケについて知りたい」という気持ちになっていました。 そこで、そのままクラフトセンター・ミュージアムへ向かいます。
クラフトセンターでは、多くの方がお皿やマグカップへの絵付け体験を楽しんでいました。 絵心にあまり自信のない私は体験はせず、そのまま展示フロアへ。
館内には、明治から昭和初期に製造された「オールドノリタケ」をはじめ、歴代のテーブルウェアやデザイン画帖などが展示されています。 3階と4階は撮影も可能で、ゆっくり鑑賞することができました。
もちろん美しい食器の数々にも目を奪われましたが、それ以上に印象に残ったのが「デザイン画帖」です。 明治時代に描かれたとは思えないほど洗練された色使いとデザインは、まるで美術作品を見ているようでした。 図案がそのまま製品へと形になっていく過程を思い浮かべながら見ていると、当時の職人たちの技術の高さにも感心させられます。
そして、思わず足を止めたのが、フランク・ロイド・ライトがデザインした帝国ホテル旧本館(ライト館)の食器でした。 以前、自由学園明日館を訪れた際に、建物や家具などライトのデザインに触れていたこともあり、「ここでもまた出会えた」という小さな喜びがありました。 建築だけでなく食器まで手掛けていたことに驚くとともに、旅先で思いがけず点と点がつながったような気持ちになりました。
Café grand vertでゆったりランチ
ノリタケの森をじっくり歩き、展示を見学したあとは、園内にある「Café grand vert(カフェ グラン ヴェール)」でランチをいただきました。
店内は落ち着いた雰囲気で、ナチュラルな木のテーブルとゆったりしたソファ席が並びます。 BGMも控えめで、とても静かな空間でした。
いただいたワンプレートランチも美味しく、見学で少し高まっていた気持ちをゆっくり落ち着かせながら、心地よい時間を過ごすことができました。
もう一度訪れて知ったノリタケの森
2年前は赤レンガの建物と巨大本棚を短時間で眺めただけだったノリタケの森。 今回は園内をゆっくり歩き、かつての工場の面影に触れ、ノリタケが歩んできた歴史やものづくりの広がりまで知ることができました。
美しい食器を生み出してきた会社という印象から、時代に合わせて技術を発展させながら歩み続けてきた企業へ。 再び訪れたからこそ、その見え方は大きく変わりました。 知れば知るほど興味が深まり、ものづくりの奥深さに触れられたことは、今回の旅で最も印象に残った出来事です。
























🏭 日本のものづくりと伝統の技にふれる旅
企業の工場見学や伝統産業を訪ね、日本のものづくりの歴史や技術にふれた記録です。
現代の食品工場から何百年も受け継がれてきた伝統の製法まで、それぞれの魅力をご紹介します。


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