2025年2月下旬、静岡県熱海市にある起雲閣を見学しました。 大正時代に別荘として建てられ、のちに旅館として使われた歴史的建築です。
館内には群青色の壁が印象的な和室のほか、ステンドグラスや暖炉、色鮮やかなタイルを使ったサンルーム、ローマ風浴室などが残されています。 和館と洋館それぞれの建築や装飾を見学し、庭園も歩いて回りました。
熱海梅園から起雲閣へ|散策途中に見つけた歴史的建築
見頃を迎えた熱海梅園を訪れたあと、市内を歩いている途中で起雲閣の存在を知りました。
当初の予定にはありませんでしたが、歴史ある建物を見学できるとわかり、立ち寄ることにしました。
起雲閣は住宅地の中にあり、周囲の街並みとは対照的な立派な表門が印象に残りました。
起雲閣は1919年(大正8年)、実業家・内田信也の別荘として建てられた建物が始まりです。1925年(大正14年)には根津嘉一郎が取得し、洋館などを増築しました。
1947年(昭和22年)からは旅館として営業し、山本有三、志賀直哉、谷崎潤一郎、太宰治など、多くの文豪が宿泊したことでも知られています。
2000年(平成12年)から熱海市の施設として一般公開され、現在は市指定有形文化財となっています。
和館「麒麟・大鳳」|群青色の壁と大正時代の窓ガラス
最初に見学した和館「麒麟」は、1919年(大正8年)、内田信也が車いすで生活する母親の静養のために建てた建物です。室内には段差を抑えるなど、移動しやすいように工夫が施されています。
1階の「麒麟」で印象に残ったのは、和室の群青色の壁でした。
室内は比較的簡素な造りですが、鮮やかな青が使われていることで独特の雰囲気があります。金沢の成巽閣にも見られる青漆喰を思わせる色彩で、この壁は旅館時代に取り入れられたものです。
もう一つ印象に残ったのが、窓ガラスです。建築当初のガラスが残されており、ガラス越しに見える景色には、現代の平らなガラスとは異なるわずかな揺らぎがあります。
古い建物を見学するとき、こうしたガラスを通した光や景色を見るのも楽しみの一つです。
2階の「大鳳」にも上がりました。こちらにも群青色の壁が一部使われており、1階との共通点が見られました。
このときは海外からの観光客のグループが畳の上で寝転がって休んでいました。予想していなかった光景に少し驚き、この部屋では写真を撮らずに見学を続けました。
洋館「玉姫」|和の造りに調和するステンドグラスとタイル
1932年(昭和7年)に建てられた洋館「玉姫」は、和と洋の意匠が組み合わされた部屋です。
洋風の家具や照明が置かれていますが、天井には桃山風の折上格天井が採用され、金唐革紙が張られています。 床には箱根の寄木張りが使われ、壁や窓の造りにも和の要素が感じられました。
金唐革紙は、ヨーロッパ由来の装飾革を和紙で再現したものです。 異なる地域の意匠が取り入れられていますが、全体として調和がとれており、落ち着いた雰囲気の室内でした。
サンルームには、京都の泰山製陶所で作られた「泰山タイル」が幾何学模様に敷き詰められています。 一枚ずつ手作業で制作された装飾タイルで、現在では製造されていない貴重なものです。
天井にはステンドグラスが使われ、室内でありながら明るく、ほかの部屋とは異なる雰囲気でした。
洋館「玉渓」|山荘風の造りと暖炉を囲む独特な装飾
「玉渓」は1932年(昭和7年)に建てられた洋館の一室です。
中世イギリスのチューダー様式を基調とした山荘風の造りで、隣接する「玉姫」とは異なる雰囲気でした。
室内には太い木の柱が使われ、特に暖炉脇の柱が目を引きました。 この柱は古い寺院の古材を転用したと伝えられ、表面には手斧で削った跡を残す「名栗仕上げ」が施されています。
暖炉は日本の床の間に見立てられ、その上にはガンダーラ風の石仏のレプリカが飾られています。 天井には燻し竹も使われ、英国風の山荘を思わせる室内に、日本やアジアの意匠が取り入れられています。
もう一つ印象に残ったのが、大きな窓に組み込まれたステンドグラスです。 草花を思わせる模様が描かれ、色ガラスと透明ガラスを通して光が差し込む様子が美しく、写真にも収めました。
玉渓では、丸い形をした額も目に留まりました。 文字や装飾が印象的で、思わず写真に収めました。
洋館「金剛」|ステンドグラスと暖炉の螺鈿細工
洋館「金剛」では、出窓に設けられたステンドグラスや暖炉の装飾が目に留まりました。
暖炉前の梁には、ハートやクラブ、ダイヤなどのトランプのマークをかたどった螺鈿細工が施されています。 見学したときにも小さな模様が気になっていましたが、貝殻を使った装飾だったことを後から知りました。
ステンドグラスには、中国の吉祥文様「双喜紋」が図案化されています。 出窓から庭を眺めることもでき、装飾だけでなく窓の造りも印象に残りました。
ローマ風浴室|大きな浴槽とステンドグラス
洋館「金剛」に続いて、ローマ風浴室も見学しました。
1929年(昭和4年)に造られた浴室で、かつては「金剛」の宿泊者専用として使われていました。
浴槽が二つ並び、壁にはタイルが張られています。窓には植物を図案化した縦長のステンドグラスが大きく使われており、一般的な和風旅館の浴室とは異なる、華やかな造りでした。
和館や洋館の客室だけでなく、浴室にまで趣向を凝らしているところにも、起雲閣の建築の面白さを感じました。
日本庭園|石畳の道から眺める和館と洋館
建物の見学とあわせて、庭園も散策しました。
庭園には池や庭石、樹木が配置され、石畳の散策路が設けられています。 道は途中で枝分かれしており、好きな方向へ歩きながら見学できました。
庭から建物を振り返ると、和館や洋館が渡り廊下でつながっている様子もわかります。 館内を歩いているときとは違い、建物同士の位置関係を外から眺められたのが印象的でした。
起雲閣のアクセス
JR熱海駅から路線バスで約10分、「起雲閣前」下車すぐ。 徒歩で訪れることもできます。
※開館日や入館料などの最新情報は、訪問前に公式サイトでご確認ください。










🌸 起雲閣を訪れる前に立ち寄った熱海梅園
起雲閣を見学した同じ日に、熱海梅園で見頃を迎えた梅を楽しみました。 園内を散策しながら、さまざまな品種の梅や梅見の滝などを見て回った様子を紹介しています。


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