🌸昭和の竜宮城に灯る幻想 ― 『和のあかり×百段階段 2025 ~百鬼繚乱~』

アートと文化

ホテル雅叙園東京(東京・目黒)にある、東京都有形指定文化財「百段階段」。
2025年7月4日(金)から9月23日(火・祝)まで、
この歴史的空間で開催された『和のあかり×百段階段 2025 ~百鬼繚乱~』を訪れました。
今年のテーマは「鬼」。この展示が、10月からの一時閉館前、最後の企画展でした。
閉館前にどうしても百段階段を見ておきたい——そう思って訪れたこの場所には、
時代を超えて光と影が共鳴する、幻想的な世界が広がっていました。


🏯文化財「百段階段」とは ― “昭和の竜宮城”の美

「百段階段」は、1931年(昭和6年)、実業家・細川力蔵が料亭として開いた「目黒雅叙園」の中で唯一現存する木造建築。
7つの部屋を99段の階段廊下がつなぐことから、この名で呼ばれています。

階段には厚さ5cmものケヤキ板が使われ、各部屋は当時の一流画家らによる装飾画で飾られていて、金箔・漆・螺鈿細工など、贅を尽くした意匠の美しさはまさに“昭和の竜宮城”。
建築そのものが一つの芸術作品です。


🎐「和のあかり×百段階段 2025 ~百鬼繚乱~」へ

毎年夏に開催される「和のあかり×百段階段」は、
「祭り」「色彩」「おとぎばなし」などのテーマで、日本の伝統美と現代アートを融合させた人気企画らしく、2025年のテーマは“鬼”。
古来より語り継がれ、恐ろしくもどこか魅惑的な存在として私たちを惹きつけてきた“異界”が、
光と影、色と音の演出で現代アートとしてよみがえった企画展。

会場全体には、灯りのゆらめきとともに不思議な緊張感と美しさが漂い、
階段をのぼるたびにまるで別の世界へ迷い込んだような感覚になりました。


👹七つの部屋に広がる“鬼”の世界

7室それぞれに異なる“鬼”の世界が展開され、訪れる人を異界の旅へと誘っていました。
とくに印象的だったのが、漁樵(ぎょしょう)の間
ここには、青森ねぶたの鬼が展示されており、
迫力ある表情と光の陰影が織りなす幻想的な雰囲気は圧巻でした。

そして、階段の頂上にある**「頂上の間」**。
ここでは、鬼の世界から桃源郷へと戻るように、金魚や錦鯉が穏やかに泳ぐ光景が入ってきます。
窓から差し込む自然光とあかりの演出が交わり、静かに現実へと帰っていくような安堵感がありました。


🌕光と影、そして静寂 ― 百段階段が語るもの

豪華でありながら、どこか儚く、静けさをたたえた「百段階段」。
鬼という“恐れ”の象徴を通して、人の心に宿る闇や祈り、そして再生の物語を描いているようでした。
アートが語る“異界”は、実は私たちの内にあるもの。
そのことを感じさせてくれる、心に残る展示でした。


🎇閉館前の貴重な企画展を見届けて

2025年10月からの一時閉館を前に訪れた、
「百段階段」で行われる最後の企画展『和のあかり×百段階段 2025 ~百鬼繚乱~』。
昭和の美が息づく空間に灯る幻想のあかりにまた、出逢いたいと思いながら会場を後にしました。
次にこの階段をのぼるとき、また新たな物語が生まれていることを祈りつつ。

訪問日:2025年7月8日(火)

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