額谷石切場の静寂と高尾城跡の記憶──金沢の山里で過ごす東京発ひとり旅

北陸

金沢滞在中に、ふと「近くで自然を感じながら歩ける場所はないだろうか」と探して見つけたのが、額谷レクリエーション遊歩道。
そこから導かれるように出会ったのが、額谷石切場跡高尾城跡でした。
観光地ではない、金沢の奥深い里山に息づく歴史と静寂の時間。ひとり旅ならではの発見と、胸に残る思いを記します。


2023年9月、金沢滞在中のこと。
「里山の空気を感じられる場所を歩いてみたい」と思い、調べていて見つけたのが額谷レクリエーション遊歩道でした。
ところが、観光案内所で尋ねても「聞いたことがない」とのこと。
そこで金沢市に問い合わせてみると、「廃道ではありませんが、大雨の影響で一部通行止めの箇所があり、山深くひとりでの散策はおすすめできません」との回答がありました。

それでも興味が尽きずにいたところ、「地元町会で清掃などをしており、日程が合えば石切場跡を案内できるかもしれません」と嬉しい連絡をいただき、地元の方の案内で額谷石切場を訪ねることになりました。

当日、額東神社で待ち合わせ。
山側幹線の「額東神社前」交差点を山の方へ進み、さらに左の道へ。
ほどなく、木々に包まれた山あいの静かな風景が広がります。

このあたりは、藩政期から昭和初期にかけて大量の石が切り出されていた場所
周辺には二、三十もの洞窟が点在しており、往時の活気を今に伝えています。
戦時中には軍需工場の建設も進められたそうですが、稼働前に終戦を迎え、“幻の軍事工場”となったのだとか。また、近くには**冨樫家代々の墓所「冨樫家御廟谷」**もあり、金沢の歴史を感じさせる場所でもあります。

案内を終えて山を下りると、日常の喧騒が少し遠くに感じられました。
金沢の住宅街からほんの少し山に入るだけで、こんなにも深い自然と歴史が眠っていることに驚きます。

その後、ひとりで高尾城跡へ。
ここはかつて、冨樫氏滅亡の舞台となった場所。
春には桜が山をピンク色に染めるそうで、「とても美しいですよ」と、先ほどの案内の方が教えてくれたことを思い出しながら見晴台に登ると、金沢市街が一望できました。

いつか父を連れてその桜を見せたいと思っていたのですが、その願いは叶わず。
それでもこの静かな山の風景のことを思い出すと、ふと父の笑顔を思い出し、自然と心が穏やかになります。

静寂と記憶が重なる金沢の山里。
観光地とは違う、心に残るひとり旅の時間となりました。

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