子どもの頃に家族と訪れた立山室堂。年月を経てもう一度歩いてみたいと思い、金沢滞在中に季節限定の直行バスで再訪しました。
迎えてくれたのは、記憶にあった青空ではなく、一面の霧に包まれた世界。それでも、みくりが池や地獄谷、雷鳥沢を歩くうちに、霧だからこそ出会える静けさや自然の力強さが心に残りました。
この記事では、金沢からのアクセスとともに、秋の立山室堂を歩いた一日の様子を紹介します。
霧に包まれた室堂に立って
2023年9月下旬。
父の介護で金沢を訪れる機会が増えた頃、子どもの頃に家族と訪れた立山室堂の景色をもう一度見てみたいと思うようになりました。
東京から向かうとなると深夜バスの利用が一般的ですが、調べているうちに、金沢駅から室堂まで直行する季節限定のバスがあることを知ります。
毎日運行ではなく、秋の限られた日にだけ運行されるバスでしたが、滞在日と運よく重なり、迷わず予約しました。
道中、隣の席になったのは年配の女性でした。
若い頃は北海道をはじめ各地の山を縦走していたそうですが、今は登山は難しくなり、「山の空気を感じたくて、このバスを予約したの」と笑顔で話してくださいました。
「山は紫外線が強いから服も傷みやすいんだよ。」
そんな経験談や、これまで歩いてきた山々の話を聞いていると、目的地へ向かう時間そのものが旅の楽しさになっていきます。
一方、前の席では登山装備を整えた男性二人がルートの相談をしています。
登山を楽しむ人、景色を楽しむ人、それぞれの思いを乗せてバスは標高2,400mの室堂へ向かっていました。
ところが、室堂に到着した瞬間、目の前に広がっていたのは一面の霧。
遠くの山も、池も、その輪郭はほとんど見えません。
「今日は真っ白か……。」
内心少し残念に思いました。
本来は、みくりが池から地獄谷、雷鳥沢まで散策し、最後はホテル立山でゆっくり過ごそうと思っていました。
雄山や一の越山荘まで歩くことも少し考えましたが、帰りのバスの時間を考えると無理は禁物。今回は室堂周辺をのんびり歩くことに決めていました。
けれど、その白さの中に立ったとき、ふと気づきます。
音がすっと消えていくような、静けさに包まれていることに。
子どもの頃に見た青空の立山とはまったく違う景色でしたが、この日だからこそ出会えた立山がそこにありました。
霧の中を歩く、静寂の立山
室堂ターミナルから歩いて7〜8分ほどで、室堂平のシンボルでもあるみくりが池に到着します。
霧が流れるたびに景色が現れては消え、同じ場所でもまったく違う表情を見せてくれました。
歩き始めて驚いたのは、霧が濃くなると散策路の先が見えなくなることです。
遊歩道はきちんと整備されているのに、足元から少し先が真っ白になり、不安になって立ち止まることが何度もありました。
霧が流れて道が見えるとまた歩き始め、再び白く包まれると足を止める。
その繰り返しです。
今振り返れば幻想的な体験でしたが、そのときは「道を外れて池に落ちたらどうしよう」という思いも頭をよぎりました。
観光で歩く散策路でも、自然は簡単に表情を変える。
その大きな力を実感した瞬間でもありました。
みくりが池温泉の前にあるテラスまで来ると、地獄谷の方から硫黄の匂いが風に乗って漂ってきます。
視線の先には鮮やかな青い水をたたえた池と、あちこちから立ち上る白い噴気。
子どもの頃はもう少し近くまで歩いた記憶がありますが、現在は火山ガスの影響で立入規制が行われています。
エンマ台展望台から眺める地獄谷では、火山ガス情報ステーションが設けられ、ガスの濃度を監視している様子も見えました。
美しい景色なのに、硫黄の匂いと噴き上がる白煙が自然の力と怖さを静かに伝えてきます。
思わず見入ってしまうほど美しいのに、決して近づいてはいけない。
そんな相反する気持ちになる場所でした。
その後は、りんどう池を経て雷鳥沢方面へ。
色づき始めた草紅葉が広がり、紅葉には少し早い時期ながらも、季節がゆっくり秋へ向かっていることを感じます。
雷鳥荘や雷鳥沢ヒュッテまで歩くと、ここでも硫黄の匂いが漂っていました。
こんな場所に泊まって朝焼けや夕焼けを眺めてみたいと思う一方で、自然の力の大きさを目の前にすると、少し怖さも感じます。
子どもの頃は「温泉みたいな匂い」「冒険みたいで面白い」と感じていたのかもしれません。
同じ景色を前にしていても、大人になった今は自然への畏敬の気持ちの方が強くなっていました。
雷鳥沢にはカラフルなテントが点在していました。
想像していたほど数は多くありませんでしたが、雄大な自然の中に並ぶ色とりどりのテントは印象的で、山で過ごす時間の豊かさを感じさせてくれます。
帰り道、霧が少しずつ流れ始めました。
ほんのわずかな時間だけ、雄山と一の越山荘が姿を現します。
その一瞬だけ見えた景色は、不思議なくらい強く心に残りました。
ずっと晴れていた景色よりも、「ようやく見えた」という喜びがあったからかもしれません。
立山室堂で過ごす、記憶に残るひとり旅
久しぶりに訪れた立山は、記憶の中にあった青空の風景とはまったく違う、霧に包まれた世界でした。
それでも、この日にしか出会えない静けさがあり、自然の大きさと向き合う時間がありました。
子どもの頃には冒険のように感じていた場所も、大人になった今では、美しさと同時に自然への畏れを感じる場所へと変わっていました。
景色は変わっていなくても、それを受け止める自分が変わっていたのかもしれません。
金沢から少し足をのばして訪れた立山室堂。
青空ではありませんでしたが、霧だからこそ心に残った風景がありました。
子どもの頃の思い出と今の自分を重ねながら歩いた時間は、忘れられない一日になりました。
立山・室堂へのアクセス(今回のルート)
今回の立山訪問では、金沢駅から室堂までの直行バスを利用しました。
乗り換えがなく、気軽に標高約2,400mの室堂までアクセスできるのが大きな魅力です。
- 金沢駅 → 室堂(直行バス・要予約)
- 所要時間:約2時間半〜3時間
富山駅から立山黒部アルペンルートを利用する方法もありますが、今回は金沢滞在中だったこともあり、移動がシンプルな直行バスを選びました。


















🏔 北アルプス・大自然を歩く旅
立山室堂や黒部エリアで出会った雄大な自然の風景をご紹介します。
滝や峡谷、山岳地帯など、それぞれ異なる表情を見せる北アルプスの魅力を楽しめます。


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