福井県の越美北線と、岐阜県の越美南線。かつては両路線をつなぎ、北陸と東海を結ぶ「越美線」として全線開通する計画がありました。しかし、九頭竜湖駅と北濃駅の間は開通せず、鉄道はつながらないままとなりました。
2023年7月、その未成区間をバスでたどるツアーに参加しました。大雨による越美北線の不通で予定が変更になりましたが、終着駅の九頭竜湖駅を再訪し、九頭竜湖にも立ち寄りました。
前編では、越美線が計画された背景と、福井県側で訪れた場所を紹介します。
越美北線の車窓に魅せられ、未成線をたどるツアーへ
2023年7月、越美線の未成区間をたどるバスツアーに参加するため、東京から福井県へ向かいました。
以前、越美北線に乗った際、車窓から見える山あいの景色が印象に残っていました。終点の九頭竜湖駅まで乗りましたが、列車の折り返し時間が短く、駅の周辺を見るだけで帰ることになりました。
子どもの頃に訪れた九頭竜湖にも行きたかったものの、湖は駅から歩いて気軽に行ける距離ではなく、そのときは立ち寄れませんでした。
その後、越美北線には岐阜県側の鉄道とつながる計画があったことを知り、なぜ山深い地域を鉄道で結ぼうとしたのか、なぜ実現しなかったのかという歴史にも興味を持つようになりました。
そんなとき、未成区間をバスでたどるツアーを知りました。主催する大野観光バスに直接申し込み、前泊して参加することにしました。
越美線とは?福井と岐阜を結ぶはずだった鉄道
越美線は、福井県側の越美北線と岐阜県側の越美南線をつなぎ、北陸と東海を結ぶ路線として計画された鉄道です。
岐阜県側の越美南線は1934年に北濃駅まで開通しました。一方、福井県側の越美北線は1960年に勝原駅まで開業し、1972年に九頭竜湖駅まで延伸されました。
しかし、九頭竜湖駅と北濃駅の間は鉄道が建設されず、両路線がつながることはありませんでした。越美南線はその後、第三セクターの長良川鉄道に引き継がれ、現在も運行されています。
なぜ越美線は計画されたのか
越美北線の建設には、北陸と東海地方の経済交流を促すだけでなく、沿線の森林資源や地下資源の開発、九頭竜川水系の発電計画を支えるという目的もありました。
1960年の国会会議録にも、こうした建設目的が記されています。山間部を通る鉄道は、地域の産業振興や資源開発を支える交通手段として期待されていたのです。
なぜ全線開通しなかったのか
一方、福井県と岐阜県の県境付近は山が深く、鉄道の建設には厳しい地形と多額の費用という課題がありました。
さらに、国鉄の経営悪化や地方路線を取り巻く交通事情の変化もあり、未成区間の建設は実現しませんでした。
九頭竜湖駅で終わる線路の先に、かつてどのような鉄道が計画されていたのか。その場所を実際に見てみたいと思ったことが、今回のツアーに参加した大きな理由でした。
大雨で越美北線が不通に|越前大野駅からバスで出発
ツアーは当初、九頭竜湖駅に集合する予定でした。私も越美北線に乗って終点まで向かうつもりでしたが、出発数日前の大雨で線路が被災し、列車が不通となってしまいました。
そのため、集合場所は越前大野駅に変更され、九頭竜湖駅まではバスで向かうことになりました。
参加者は福井県内の方が中心で、東京から前泊して参加したと話すと、主催者の方にもほかの参加者の方々にも驚かれました。
予定していた越美北線の乗車は叶いませんでしたが、未成区間をたどるという旅の目的は変わりません。越前大野駅からバスに乗り、九頭竜湖駅を目指しました。
九頭竜湖駅を再訪|恐竜の装飾が増えた終着駅
九頭竜湖駅は、JR越美北線の終着駅です。山あいに建つログハウス風の駅舎が特徴で、駅の周辺には道の駅「九頭竜」もあります。
以前訪れたときは、山間部の小さなローカル駅という印象でした。しかし、2023年に再訪すると、駅の周辺やホームには恐竜のモニュメントや装飾が見られ、以前とはずいぶん印象が変わっていました。
福井県は恐竜化石の産地として知られ、大野市でも恐竜を観光資源として活用しています。九頭竜湖駅でも、恐竜のオブジェや骨格を描いた装飾が目を引きました。
九頭竜湖駅で途切れる線路
今回、特に見たかったのがホームの先にある線路の終端です。
九頭竜湖駅で線路は終わり、その先に鉄道は続いていません。かつてはここから岐阜県側の北濃駅までつながる計画がありましたが、実現しなかった区間です。
以前は列車の折り返しまでの短い時間しか滞在できませんでしたが、今回はツアーで訪れたため、駅や線路の終端を見て回ることができました。
保存されている8620形蒸気機関車
九頭竜湖駅の近くには、8620形蒸気機関車の28651号機が保存されています。
この機関車は、かつて越美北線で活躍した車両で、1973年まで使用されていました。越美北線は当初、勝原駅まで開業し、その後1972年に九頭竜湖駅まで延伸されています。
現在は保存車両として、その姿を見ることができます。
九頭竜湖と箱ヶ瀬橋|瀬戸大橋の試作橋を訪ねる
九頭竜湖駅を見学した後、バスは九頭竜湖方面へ向かいました。
九頭竜湖は九頭竜ダムの建設によって生まれた人造湖です。子どもの頃に訪れたことがあり、以前越美北線に乗った際にも行きたいと思っていた場所でした。
今回のツアーでは、九頭竜湖に架かる箱ヶ瀬橋を訪れました。「夢のかけはし」の愛称で知られる、全長266mの吊り橋です。
箱ヶ瀬橋は、本州と四国を結ぶ瀬戸大橋のプロトタイプ(試作品)として建設されました。2022年には土木学会選奨土木遺産にも認定されています。
バスは橋の近くにある広場に停車しました。そこには、五木ひろしさんの歌「九頭竜川」の歌詞が刻まれた歌碑も設置されていました。
以前、越美北線で九頭竜湖駅を訪れた際には、列車の折り返し時間が短く、湖まで足を延ばすことができませんでした。今回はツアーで湖畔まで訪れることができ、子どもの頃以来の九頭竜湖を見る機会にもなりました。
鉄道がつながらなかった区間を越えて、岐阜県へ
九頭竜湖を訪れた後は、さらに岐阜県側へと向かいました。
ツアーの途中、中部縦貫自動車道を走った際、ガイドさんから、越美線は福井と岐阜を鉄道で結ぶ計画だったものの実現せず、現在は高速道路による接続を目指して整備が進められている、という説明がありました。
中部縦貫自動車道はまだ全線開通していませんでしたが、鉄道では実現しなかった県境を越える交通路が、時代を経て道路として整備されようとしている。その話が特に印象に残っています。
今回の旅では、鉄道が開通しなかった区間を実際にバスで移動することで、地図や資料だけではわからなかった山間部の地形や距離を知る機会にもなりました。
後編では、岐阜県側へ移動した後の行程と、長良川鉄道の観光列車「ながら」に乗車した様子を紹介します。





🚃 越美線の未成区間をたどる旅・後編
九頭竜湖駅と箱ヶ瀬橋を訪れた後は、バスで岐阜県側へ向かいました。
後編では、長良川鉄道の観光列車「ながら」に乗車した様子や、未成線区間を越えた先の旅を紹介しています。
❄️ 冬の越美北線と永平寺
別の旅では、冬の越美北線にも乗車しました。
雪景色の九頭竜湖駅と永平寺を訪れたときの様子を紹介しています。


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