雪の中を歩いて出会った優しさ ─ 天日陰比咩神社と織姫の里なかのと

冬の旅

冬の中能登を訪ねた日。
「どぶろく特区」として知られるこの町には、古くから神社に息づく酒づくりと、人の温もりがありました。雪に舞われながら歩いた道の先で出会ったのは、思いがけない親切と、ひっそりとした駅に残された一篇の詩。
旅の終わりに、心の奥が静かに温まるような時間でした。


冬の金沢滞在中に、どうしても訪れたかったのが「能登國二之宮 天日陰比咩神社」と「道の駅 織姫の里なかのと」。
中能登町は「どぶろく特区」として知られ、三つの神社で江戸時代から続くどぶろく醸造が受け継がれています。そのひとつである天日陰比咩神社へは、七尾駅から路線バスに揺られて約30分。
神社近くのバス停で降り、雪の舞う中を歩くこと7分、しんとした境内にたどり着きました。

参拝を終え、次は道の駅へ。
徒歩で約40分の道のりは、人気のない農道やトラックが行き交う国道。
時折吹く雪混じりの風に心が折れそうになりながら、それでも前へと足を進めました。
目的は、夫へのお土産にどぶろくを、そして父への贈り物に「なかのと姫みかん」を買うこと。
このみかんは糖度10〜12、甘味と酸味のバランスがよく濃厚な味わいが特徴です。

ようやく辿り着いた道の駅では、残念ながら姫みかんは売り切れ。
落胆していたところ、スタッフの方が生産者に連絡してくださり、追加の商品をわざわざ届けてくれました。その優しさに胸が熱くなり、疲れも一気に吹き飛びました。

帰り道、最寄りの吉川駅は、小さな無人駅で目に留まったのは「駅」という題の詩。
“ふるさとに帰ってきた俺を、列車はもう乗せてくれない”
“この駅をこんなふうにしたのは、この俺かもしれない”
素朴な言葉の中に、時代の流れと人の想いが滲んでいて、しばらく立ち尽くしてしまいました。

あれから間もなく、能登を襲った震災の報せを聞き、あの日出会った人々のことが頭をよぎりました。
あの親切な笑顔が、どうか今も変わらずにありますように──。

能登二宮駅ホームにショーウインドウ!!織物が盛んな町らしい
瓶入りどぶろくは重いので宅配便に🚚
父へのお土産のみかんは手持ち。甘酒は滞在中に飲むために。
吉川駅に掛けられていた駅という題の詩。長くて1枚におさまらず、2枚に分けて撮影

訪問日:2023年12月21日(水)
往路:金沢滞在中のため、金沢(七尾線)→ 七尾(北鉄バス)→ 二宮(徒歩7分)→ 天日陰比メ神社 (徒歩40分)→ 道の駅 織姫の里 なかのと(徒歩15分)→ 吉川
復路:吉川(七尾線)→ 金沢


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※すべて2023年12月に訪れた北陸の旅の記録です。

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